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蛍舞う(蒼緋)完
カクセイム
 夢を見た。それは夢の中で「これは夢だ」と認識できる覚醒夢というやつで、とんでもない悪夢だった。
 目の前には凄まじい勢いで流れる濁流。一目見て、この増水した川はあの蛍狩りの場所だと分かった。彼女と初めて会った場所。苔むした匂いも、ズボンを濡らす草の露も、自分の服装でさえ、あの時と寸分違わず同じ。嫌になるくらい、悪質なくらい、全く同じ。ただ違うのは――茶色く濁った逆巻く川の流れと、その向こう岸に、彼女がいること。彼女のもとに駆けつけたいのに、川にはばまれる。彼女はそんな俺を見て、哀しそうな苦しそうな、あの蛍の笑みを向けるのだ。
「     」
 彼女が、何か言う。濁流の轟音がその声をかき消す。あの、透き通った声が聴こえない。
(俺を、責めているのか)
彼女は、何を言いたかったのだろう。
(それとも、)

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あきゅろす。
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