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彼等は反逆し得るか? (kankisis) 完
   
 港に大軍が整列していた。「全軍、乗船せよ!」号令が掛かり、艦隊は兵士達を呑み込んだ。
 北洋貿易連盟の船に、島中から集まったトルカセニレの義勇軍が乗っていた。海軍の将軍によると、コルトを出港後海岸沿いに本土に接近し、トスキールのロイドから上陸するらしかった。


「ディヌルサーク、レービス、アセムトリトンが帝国に奪われた今、国境合同部隊は東側に残しておくべきだろう」ナラヴが言った。
「いや、国境合同部隊でなくては。東側には王立親衛隊を代わりに回しておけばいい」


 船団はロイドに辿り着いたが、何か問題が起きたようだった。非常命令が出されていた。
「何が起きているんだ。くそ、よく見えない」
「公王さんが……囲まれているのか」
「あれはパイクスタッフか」
「説得しているようだ」
 信号弾が打ち上げられた。
「終わったな」
 彼らはレヴォルトという組織らしかった。


 フォルザイルらはロイド川の近くの遺跡にいた。レヴォルトが用意したという話だった。
「諸君! 聞こえたらよく聞け! 聞こえなかったら後で上官に聞け!」陸軍の将軍が声を張り上げた。義勇軍は端の方にいたが、フォルザイルらは陸軍将軍の近くに立っていた。「明日の正午、我々はコスクに向けて突撃する! 現在コスクは帝国軍の手により要塞化しているが、国境線でネーズル軍が陽動作戦を行い敵を誘き出す。コスクを急襲し一挙制圧した後、王立軍と交戦中の帝国軍を背後から挟撃、包囲殲滅する。明日未明に出発する。良く休養を取っておくように」
 他の義勇兵に連絡事項を伝えた後、フォルザイルは割り当てられた部屋に一人戻った。
 盾は常に手の届く範囲に置いていた。フォルザイルは盾を持ち上げ、長旅で着いた汚れを落とした。 


 軍勢はコスクに到着した。市内には一切の人影がなかった。
「誰もいないじゃないか」
「不気味だな」
「王国の部隊が攻撃されているのでは?」
「森を見ろ……あれは攻城砲だ……うまく嵌められたようだな」
 砲弾が放たれた。市街が破壊されていく。
「全軍港へ集まれ! 防御円陣」陸軍将軍が叫んだ。
 公国軍は後退を始めたが、義勇軍は遅れを取っていた。イールドクとグリオルトが破片に当たって倒れた。


「ズヘニグはどうしているのだろうか……」オドグは呟いた。
「何か言ったか?」
「いや、別に」


 港に到着したトスキール艦隊が主砲を連射した。これを見た陸軍将軍が叫んだ。「全軍、混乱に乗じて帝国を蹂躙しろ!」遅れを取っていた義勇軍はコスク市街の城壁を内側から突破した。
「突っ込め! 敵を殺せ! 奴らは敵だ! ためらう事などない! 殺せ!」
 公国海軍と帝国の砲弾が飛び交う中、義勇軍は騎兵部隊に突っ込んだ。ケウェレグはナイフを投げつけられそれを撥ね除けたが、しかし直後に背後から槍でその身を貫かれた。フォルザイルの隣では、マルネッヘがしぶとく戦っていた。
「味方の砲撃には絶対に当たるんじゃない!」盾で相手の剣を受け止めながらフォルザイルは叫んだ。
 帝国軍は崩れ始め、やがて撤退を始めた。公国の騎士隊がそれを森の中にまで追っていった。
「俺達も行くか?」リブレスが聞いた。
「いや、もう騎士隊に任せよう」


「イールドクとグリオルトが砲弾の破片に当たって死亡、ケウェレグも帝国兵に殺され、ルクフォーアは行方不明、おそらく戦死」ジルカが言った。「あまり気分のいい結果じゃないな」
「だが、その代わりにコスクは解放された」フォルザイルが言った。
「まだ疎開しているトスキール国民を呼び戻すのに、艦隊がコルトに戻るそうだ……義勇軍も、戻りたければ乗せていくみたいだ……どうする?」リブレスが言った。
「まだ俺にはやる事がある」
「そうか、マラートとシスシャは戻ると言ってたが」
「好きにさせとけ」

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あきゅろす。
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