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彼等は反逆し得るか? (kankisis) 完
 ボロカニルトム ボレイゲン
 ナラヴによると、ズヘニグはトスキール公国からの同盟締結の交渉の要求を受けて、ボロカニルトムのボレイゲンへと向かったようだった。
「エルス城の外部対応部には私が伝えておきましょう」イェイレルが言った。
 オドグは礼を言うと、ナラヴとソーロンを出た。「国内問題対応部としても、君に協力しなけりゃならないからね」


「エルス城に反逆者が入り込んだというだけでも問題になっているんだぞ……ナラヴ・ケルよ、もしそのことが真実だったとしてだ、」ソロント議会の議長は続けた。「……帝国の者が政府に入り込んでいたということが本当だったとしてだ、帝国にどれだけの情報が流れたのか、把握できているのか」
「ズヘニグは几帳面にも全てのコピーを取っていました。ここにその一部があります」ナラヴは束を掲げた。「政府の部署の構成から王国内の地理全般まで――ありとあらゆる情報が帝国に流されていたようです。あと……例の暗殺未遂事件にも、ズヘニグは関わっていたようです」
「そうか……オドグ・ファス」「はい」「臨時外交長官に任命する」


 走る蜥蜴はロントやロバースを通り過ぎ、一気にボレイゲンへ辿り着いた。「臨時外交長官のオドグ・ファスだ! 特設外部対応庁は?」「あそこです」
 オドグは蜥蜴を降り、対応庁の前に立った。オドグは証明書を兵士に見せた。「わかったな」兵士達は応接室へと走った。オドグもそれを追った。兵士が扉をこじ開けた。「ズヘニグ、お前は帝国の人間だろう!」
「お前を拘束する」兵士の一人が証書を掲げた。ズヘニグの顔から汗が噴き出すのが見えた。トスキールのアルバート・ナイファーと思しき人物も、驚きを隠しきれていないようだった。彼も何事かを言っている。
「アルバート・ナイファー殿、元ノメール方面担当第一外交官のオドグ・ファスです。今は特別に臨時外交長官をしています」
「お会いできて光栄です。では、私の話は幾らか聞いていらっしゃいますでしょうか」二人は改めて席に着いた。どうやらナイファーには白く長い髭をいじる癖があるようだった。ズヘニグは既に捕まり連れ去られていた。
「……もちろん、聞き及んでおります。既にネーズルの国境合同部隊は国境線からそちらのトスキールに向けて進軍中です」
 ナイファーの顔に希望が現れた。「では、共に戦って下さるのですか」
「ええ、帝国は我々共通の敵です。しかし、こんな所にまで配下を潜り込ませていたとは、思いもよらなかったでしょう……御迷惑をおかけしました」
「いえ、気付かなかった私の失態です。我々と同盟を結んで下さりますか」
「喜んで、お受け致しましょう」
 ネーズル・トスキール戦時同盟はすぐさま締結された。ナイファーは続けた。「それと、我がトスキールの国民達の居場所をそちらに提供して頂きたいのです。首都が敵軍に奪われようとしています。今、国民は船で疎開を進めています。このまま海に漂い続ける訳にもいかないのです」
「もう用意しています。疎開地を急遽募集した所、ここより北方の入植地、トルカセニレ島のコルトという町が立候補しました。トルカセニレ島は十分にあなた方が暮らせるだけの土地があります。あまり住みやすい環境ではありませんが、今提供できる場所はそこしかないのです。コルトは島の南東部に位置します、そちらに向かって頂きたいと」
「有難う御座います、オドグ殿」


 出港するトスキールの外交船を見送り、オドグはズヘニグを尋問した。
「デルマスィンを唆したのか?」
「知らんよ」
「デルマスィンを唆したのか?」
「知らんよ」
「デルマスィンを唆したのか?」
「そうだ」
「そうか」
「ギズを殺したのも俺だ……書類、見たんだろう、君の知りたい事は、全てそこにある」


「トリマン・エアフォルク将軍率いる国境合同部隊はトスキールの陸軍を連れて無事にケレントタストン地方に辿り着いたようです」
「そうか」オドグはズヘニグの書類を眺めていた。自分の知りたい事が、全てここにあるだと? オドグは諦め、机にしまい込んだ。


「俺の知りたい事とは?」
「彼等は反逆し得るか」
「答えは」
「お前だけが知っている筈だ」


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