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彼等は反逆し得るか? (kankisis) 完
 ケニムヴェルセス ソーロン
 ナニウォスは最早誰からも忘れ去られたかのような、細く捻れ、とても寂しい路地を、奥へ奥へと進んでいた。途中、人で賑わっている広場を幾度か脇に見掛けたが、ナニウォスはそれに目もくれず、唯ひたすら一心に路地を進んだ。前方の空は、のっぺりとした厚い雲が覆い隠していた。自分の進んでいる道の他に、両脇にそれぞれに路地があることを知っていたが、この道を進む事に、ナニウォスは限りない自信を持っていた。既に片方の路地は方向を完全に逸れてしまい、きっと行き止まりになっているという事をナニウォスは知っていた。上空を旋回する鳥以外、近くに生き物の姿は認められなかった。人の手によって不完全に形骸化したその情景こそが、ナニウォスに完全な自信を与えていた。太陽は沈みかけていた。日の沈まない内に辿り着かなければ……そのような不安も、ナニウォスを目的へと駆り立て、行動を起こさせるのだった。分厚い雲は、目の前の空間さえも覆っていた。一瞬ナニウォスは引き返そうか迷ったが、このまま進む事にした。
 粗末な布団で目を覚ますと、ナニウォスは今日するべきことを思い出した。ミエルクはまだ戻っていないようだった。宿を出、昨日渡された紙に書かれた場所へと向かった。
 古い路地裏の煤けた建物には小さな扉があった。地下へ下りると、目的の部屋が見つかった。ナニウォスは部屋へと入った。
「誰だ! 名前を言え」ナニウォスはナイフを突き付けられた。
「大丈夫だ、フェデ。こいつは俺が呼んだ奴だ」カラッコズーフが言った。
「ナニウォス・ヒデオユか。これで全員か」ナイフを下ろすとフェデは言った。
「こいつ、大丈夫か? まさか、また明日辺りに馬車に轢かれたりはしないだろうな」
「エルデンじゃあるまいしそれは」
「あれの代わりだ、そうでもおかしくない」
 隅に座っていた男が立ち上がった。
「さあ……全員集まった所で……実行班八人は手を挙げろ」
 次々に手が挙がった。カラッコズーフとフェデも手を挙げていた。七人しか手が挙がらないのを見て、ナニウォスは咄嗟に手を挙げた。
「よし……計画は出来ているな」カラッコズーフがしっかりと頷くのを見て男は続けた。「城の守りは薄い……中にいるのは殆ど役にも立たない様な役人ばかりだ。衛兵もいるが、気にする程の人数ではない。小役人の振りをしておけば侵入は容易い。細かな問題は君達に任せてあるが、失敗はするな。君達は稀な人材だ。無駄にはしたくない――五日後、文字通り全てが決まる。実行班でない者もこれまで、様々な意見を戦わせて来た……ディグワリー、お前は頭が良い。以前は仲間割れをした事もあったが、結局は同じ所に戻って来るしかなかった……我々はそれを知っている。仲間の死もあったが、見ろ、そこにエルデンがいる。これは、我々はどんな事があったとしても目的を遂行し、やり遂げなければならないという代え難い証拠だ。諸君は初心を忘れてはならない」
 部屋の中央に置かれた机の上の杯を、全員一つずつ手に取った。「ネーズルの未来に」皆が杯を傾けた。
 その後は解散となった。

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