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彼等は反逆し得るか? (kankisis) 完
 ケニムヴェルセス ソーロン
 ミエルクはオースへ報告をしに行っていた。残されたナニウォスは一人で町を歩いていた。どうやら、サンドリケイシスが襲われたということはソーロンでも少しずつ広まってきているようだった。もしかしたらミエルクが城で報告をする頃にはもう別の流れで事実を把握されているかもしれない、とナニウォスは思った。
「おい、サンドリケイシス人か」ナニウォスは振り返った。「噂、あれ本当なのか」
「……そうですよ」
「アセムトリトンの奴らがやったのか?」
「そのようですね」
「政府がきちんと統括出来ていないんだよ、そう思わないか?」
「そうかもしれませんね」
「改善した方がいいよな」
「きっとそうです」
「気が合いそうだな。ちょっと話をしないか」
「いいですよ」
 ナニウォスに話し掛けた男はカラッコズーフ・アリーグズと名乗った。彼は暇を持て余している学生のようだった。
「なあ、ナニウォスと言ったか……ちょっと、そう――ああ、面倒くさい、国王を暗殺する計画があるんだが、それに加わらないか?」
「いつ頃するんですか」
「今月の二十日だ……人は多い方がいいからな、もし参加したいと思ったらここに来い」そう言ってカラッコズーフはナニウォスに紙切れを渡した。ナニウォスは素直にそれを受け取った。
「来るなら明日来い――同志が全員集まる。おい、言っておくが、誰にも漏らすなよ……ばれた時点でお前を疑うからな、見た所お前は口が堅そうだが」


 ミエルクはその頃オースに着いていた。エルス城の城門に近づき門番の衛兵に記録者の証明書を見せると、ミエルクは門を通り抜けた。事務棟に入ると、ミエルクは第七執務室を探した。
 やっとのことで目的の部屋を見つけ出すと、ミエルクはそこに入った。第七執務室では幾つかの机が並び、数人の役人が忙しそうに自分の仕事をこなしていた。
 一人が顔を上げた。「ミエルクじゃないか」ナラヴは続けた。「サンドリケイシスが大変なことになっているのは知っているか」
「知っているどころじゃない――逃げてきた」
「現場から?」
「そうだよ、最低な奴らに俺達の村を壊されたんだ」
「知ってる……アセムトリトンの奴らだろ……どの派閥かわかるか」
「わからない……わからないよ……俺の村は百人の集団に襲われた」
「俺の予想だとネルゼイク辺りの過激派だ」
「前に反乱を企てた奴らか……あいつらは捕まった筈だ」
「そこがよくわからない――まああそこの収容所は管理が甘いが……そう簡単に逃げ出せるような所でもない」
「壊したんだ、俺の過去を……弟も同じだ……俺のせいだ……どうかなってしまいそうだよ……」
「大丈夫か?」
「ふん、知るものか」
「無理するなよ」
 ミエルクはふらふらと第七執務室を出た。足は統制を失い、一時的な忘我状態が彼を襲った。気が付いたらミエルクは城の外に出ていた。「無理するなよ」知らずミエルクは自分に呟いた。


 夕日に照らされ建物の影が幾何学的な模様を造り出す城で、ギルナは城門の脇に立っていた。側にはディヴァン・ゲルディという衛兵が立っていた。
 珍しく誰も門を通らない中、一人だけ、若い男が外に出てきた。気力の無さげな歩き方が目立った。放心した様子で立ち止まると、何事かを呟いてまたどこかへ歩いて行った。
「あれは……」
「あいつか、何をしてるんだ」
「仕事では?」
「俺のせいだとか言ってたな」
「はい?」
「いや、何でもない、ディヴァン……」
 村……過去の破壊……何も、何も、もう残らない……自分のしていることが正しいとは……真実とは……俺は、一体、何を、夢見ているんだ?
「どうかしたか」ディヴァンが訊ねた。
「いや、何でもない、ディヴァン……」
 兄は、何と答えるだろうか。


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