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彼等は反逆し得るか? (kankisis) 完
 ケニムヴェルセス オース
 フェル=ノルドの手前でキテウク、カウセンの二人と別れた後、兄弟はギルナのいるオースへと向かっていた。
「ああ……ナニウォス、恐ろしいよ」突然それまで無言だったミエルクが呟くように言った。
「あれは、兄さんのせいじゃありません」
「本当かね……」
「そうですよ、気にすることは一つもないんです……ほら、城が見えますよ」ナニウォスの示した先にはエルス城があった。目の前を、急ぎ足の役人達が朝日の昇って来た方角とは逆の方向へと去って行った。
「ああ、城だ――あいつ、あそこにいるんだよな」
「その筈です……行ってみましょう」
 城門は開いており、両脇を衛兵が固めていた。ミエルクがその一人に近づいた。
「ここの衛兵のギルナ・ウベリクはいるか?」
 そこで衛兵ははっとしたらしく、急いで敬礼をした。「彼、ギルナ・ウベリクは今エルス城にはおりません! 彼は今、西のソーロンにいます! しかし、記録者殿、もしお望みのようであれば、あなたがここにいらしたことを彼に伝えておきます!」
「頼むよ」ミエルクは言うと、城門を離れた。
「どうでした?」門から少し離れて待っていたナニウォスが訊ねた。
「あいつ、ソーロンにいるってさ」
「確かここよりも西でしたよね」
「行こう……門の衛兵はあいつに伝えると言ってた……でもソーロンにいるなら直接言って探した方が早い、きっと」
 ナニウォスは湖畔の城を見上げた。遠くからだとその姿は威容を誇っていたが、近くで見ると何か貧弱なものをその内に感じた。所詮、王国の首府とは言えどもそれは本当に弱々しいものの集合なのだとナニウォスは思った。しかし、何か、そこに強く惹かれるものを感じたのも事実であった。
「どうした?」
 ナニウォスが振り返ると、そこにはミエルクの顔があった。「行きましょう」ナニウォスはそれだけ言うと、城から無理やり視線を引き剥がした。


 夕方、日の沈むかと思われた頃、兄弟はソーロンの〈ヒエーレ‐ネルト〉にいた。ミエルクは水の入った飲みかけのコップを少し持ち上げては軽くテーブルに打ち付けるという動作を、まるで誰かに義務付けられているかのように、意味もなく何度も何度も繰り返していた。
「それで、その事を俺に話してどうする気なんだ」ギルナが言った。
「どうするって、まずそうするべきだった、だからそうしたまでだ」
「ふん、そうか」
「なあ……どうしてそこまで」
「知るか」
 沈黙が兄弟の周囲を漂った。席を立つ音がそれを壊した。「ナニウォス、どこへ行くんだ」ミエルクが後を追った。
「駄目です、あれじゃ」ナニウォスが〈ヒエーレ‐ネルト〉の外に出て言った。「兄さん、僕が話しましょう、あれではどうにもなりません。……彼は、ああいう人なんです、怒ってはいけない!」
 ナニウォスは再び〈ヒエーレ‐ネルト〉に入った。
「あれはどうした」ギルナがナニウォスを見て言った。
「外です」
「そうか……俺はあいつが嫌いだ。論理的な理由はないが嫌いだ。何か――理性的なものじゃないんだ――何か、で、俺はあいつが嫌いだ」尻すぼみになった。
「兄さん、ミエルクの事はもういいでしょう、それより、村の事です――」
「政府はまだ何も知らないようだ。噂も聞かない」
「ミエルクが知らせるつもりです。誰にかは知りませんが……とりあえず、村の事はそれだけです……」
「うん、で、そうだな、暫くはどうするんだ? ここにいるんだろうな――あいつはいつもここで泊まるし――特に行く所もないんだろう?」
「そうですね」
「もうこれで話す事はないか?」
「ええ」
「じゃあな、また」
 ギルナと入れ替わりに、ミエルクが入って来た。ミエルクは渋い表情をしていた。
「本当にあいつは――ギルナは――何て奴だ」
「何も変わりませんよ」
 ギルナはオースに戻った。


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