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マグの足跡(千葉)完
STAGE1-1 チマチーカ:おうぞくのパレード
そして、それから二回、夜を過ごした。
ミガサ王国の首都、チマチーカに位置する小さなホテル。
マグはそこのベッドの上で目を覚ました。
あの後、マグは早速ミガサ王国へと向かった。
思い立ったが吉日である。その日は、チマチーカから
ちょっと離れた所に位置するダンカタウンでパレードについて情報収集した後、野宿した。
そして昨日、チマチーカに到着したのだった。
パレードはどうやら、チマチーカの北大通りで行われるらしい。
部屋の窓から外に目をやると、商業ビルが壁のように立ち並んでいる。
民家と畑しか無かったダンカタウンと比べ、ここはまさに都市といった感じの場所だ。
さらに下の方に目をやると、沢山の人々が行き交っているのが見えた。
まだ朝早いというのに…。パレードが始まるのは、昼の十二時と聞いている。
ホテルで貰ったパンフレットにもそのことが記されていた。
「ったく、朝からご苦労さんなこった」
窓から離れ、テーブルの上に置いてある布袋から小さな財布を取り出した。
中身を確認する。銀コイン四枚に赤コイン、銅コインが数枚。
今泊まっているホテルは一泊200レアル、銀コイン二枚した。
そろそろ、何か仕事をしないとな。
マグは自称何でも屋。要はフリーターだ。
チマチーカに来たのだって、パレードだけではなく仕事探しという立派な目的が…
あるようなないような。
「さて、行くか! っとその前にトイレトイレ…」

『北大通りの車道は午後二時まで交通禁止となっております! ご協力をお願いします!』
スピーカーから大音量で放送が流れている。
この台詞を聞いたのはこれで何度目だろうか。もう聞き飽きた。
街は人でごった返していた。とにかく人、人、人。
スピーカーの隣に設置されていた大時計に目をやると、あと二、三分でパレードが始まる時間だった。
太陽は真上に位置している。
「朝からスペースとっといて良かった〜」
「今日はあそこの店、食べ放題半額らしいぜ」
そんな会話が聞こえてくる。マグは、スタート地点であるチマチーカ聖堂から少し離れた場所にいた。
車道側に群がる人の壁の最後列。まぁ、多分見えないってことはないだろう。パレードだし。
『パレード開始です!』
大音量で、スピーカーからいきなり開始宣告。
「よしきたっ」
「おいっ始まったぞ!」
「よし、カメラだカメラ!」
一気に周りがうるさくなった。
まとまった歓声があがるというよりは、ザワつく感じだ。
「生で王子が見られるなんて〜」
「あのー」
マグは近くにいた、おそらく自分と同い年ぐらいの女に話しかけた。
「あと何分ぐらいでここに着くんですか?」
「えーと、…あと十分はかかりますかね」
「あ、どうも…」
意外とかからないものだな。とりあえず、ミガサ人でも眺めてるか。
暫くすると兵隊のトランペット隊が見えてきた。
勇壮な音楽と共に、行進する兵隊達。リズム隊もいる。
「ということは、もしかして…」
遠目で隊列の奥の方を見てみると、何やら派手なフロート車が進んでくるのが見えた。
よし、双眼鏡を準備して、と…。
そして、ついにフロート車が目の前を通りがかるところまできた。
やはり王族が乗っているようだ。
「……………ん?」
マグは自分の目を疑った。
頭の上に、見事な一本ヅノが生えている。
王族と思われる者、全員に。
「ちょっとちょっと!」
「なんだよ兄ちゃんこんな時に」
今度話しかけたのは隣にいたおじさんだった。
「何であの人たち、ツノ生えてんですか!」
「ハァ? なんでそんな事も知らな…あ、もしかして外から来た人?」
おじさんはやや呆れた口調で話す。
「ヨドから来ました」
「ああ、ヨド人ね。…ツノはな、王族の証なんだ。
王族の血が混ざっている者には、必ずツノが生える。
ちなみにあのツノからは何やら特殊なホルモンが出ているらしく、ハゲを防止してくれるらしい。
だから、王族は皆髪が潤ってるってワケ」
「は、はぁ」
ハゲ防止…なんだそりゃ。ツノか…今まで知らなかった。
そうなると…当然王女にもツノが生えていることになる。
「あっ、あれか?」
水色のドレスに身を包んだ、金髪の若い女性がちらっと見えた。
双眼鏡で顔を確認する。予想通りの綺麗な人だった。
そしてツノが生えていた。さっきのおじさんに確認してみる。
「王女って、あの人ですよね?」
「ああそうだよ、サラ・ムーン王女」
やはり。王女かぁ…。
王女は笑顔でみんなに、ミガサ人に向かって手を振っていた。
ツノが生えていようと、かわいい人はかわいいもんだなぁ。
呆然とそう思った。ツノもやや丸っこい、かわいらしいツノ…だと思う。
暫く見ていることとするか。あーあ仕事探しするの面倒だなぁ…
うーん……まぁそんなことは忘れて………………………………。

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あきゅろす。
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