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縹(禮晶)完

玉の護衛は縹の想像以上に大変なものだった。
朝から晩まで片時も離れさせてくれないのである。
他の護衛に交代させてくれれば良いものを、何故だか彼は縹以外の護衛を呼びつけようとしてくれないのだ。
「………水の属性なのに……。」
縹の独り言は玉にしっかりと聞こえていたようだ。
地獄耳の皇太子殿下、というのもなかなか珍しい。
「水の属性?私がか?」
「あぁ。…普通水の属性の者は一つの物事に執着しない。」
「していないぞ。帝位などには。」
確かにその通りなのだが。
じゃあ毎日毎日特定の護衛を使うのは何なのだ。
縹の言いたい事は玉にも通じたらしい。
「お前が一番腕が立って且つ信頼出来るのだ。」
「そりゃどうも。」
新入りがそれというのも問題な気はするのだが。
「父上や陽叔父、義母上は何の属性なのだ?」
どうやら玉は属性区分に興味が湧いたらしい。
「…帝は風だ。何処か捉えにくい御方の様に思えた。
陽親王は雷。勢いは良いのだが落ちてゆくだけだ。」
縹のその言葉に玉は涙を流すほど大爆笑した。
「隕石でも良いのではないか?」
「そんな区分は無い。」
「……そうか。」
玉はちょっと残念そうに呟いた。
「沙華様は火。風とは相性が良い。」
「お前は何なのだ、縹?」
「………地、だ。」
「地?」
「滅多な事では動かない相当な頑固者だ。」
「………ではなくて単なるものぐさなのでないか?」

その日、皇太子の宮殿でちょっとした爆発が起きた。


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