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縹(禮晶)完

縹の情報収集はかなり難航していた。
護衛なので玉から暇を貰わないと一人行動不可なのも理由の一つだが、誰も何も教えてはくれないのだ。
「すいません、たい…」
そこでまず空気が凍って何も言えなくなる。
「……鯛の塩焼きって美味しいんですか?」
確実に呆れられた表情をされるが、山育ちなので…とさも朴訥そうに言うと大抵は疑われずに済む。
しかし翡翠の大玉の一件については厳重に緘口令が敷かれ、口にだせば即牢屋行き、もあながち嘘ではなさそうだった。
「鯛の塩焼きは美味いぞ。祝い事にはよく出る。」
文献調査に方針転換して書庫にいた縹へ、そんな風に声を掛けて来たのはあろう事か帝張本人であった。
どうも縹の皇族想像図とは違う者も存在するらしい。
(流石は玉の父上…と言ったところか?)
「そうですか。食べた事は無いので分かりませんが。」
「……太白剣について知りたいのであろう?」
「………!」
帝は苦笑して、積み上がった本の題名と『たい…』を併せればすぐに分かるだろうに、と言った。
「聞こう。何故太白剣について知りたがる?」
押し黙ってしまった縹に帝は重ねて言う。
「安心しろ。誓って他言はせぬ。」
信用出来る気はするが、情報が少なすぎる。
だが、この帝相手にお茶を濁す事は難しそうだった。
「…………。」
嘘着いたら本気で針千本呑ましてやる、と縹は誓った。
「仇討ちの為に。」
自分が捨て子で、翔鳳峰の主・翡に育てられた事。
翡の本性は太白剣の翡翠の大玉だという事。
大玉が壊され、翡が殺されたという事…
長く、重い沈黙が辺りに満ちた。
「ではお前は翔鳳峰に捨てられていたのだな?」
「はい。」
「…そうか」
帝はそれだけ呟くと書庫から出て行った。
「………、すまない。」

帝の呟きは小さすぎて縹の耳には届かなかった。


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あきゅろす。
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