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縹(禮晶)完

                       
神仙の世界と人界を隔てる境界、天門。
この門、日や時刻によっても場所が変わってしまうので探すだけでも一苦労な代物なのである。
「……やっと、見つけた。」
それ程感情のこもっていない声で少年は呟いた。
この少年、名を縹(ヒョウ)という。
その名の通り瞳の色が縹、薄い藍色なのが特徴である。
「…………………本当に行くつもりか?」
可愛らしい童子が一人、彼の背後に佇んでいた。
まだほんの幼子とでもいうべき外見に反し、何もかもを見遥かす様な眼差しをしている。…ただの童子でない。
「仇を討つ。それまでは戻らない。」
「仇討ちか。だが彼の者が還る訳でもあるまい?」
巷によくある三流小説でも体現するつもりなのか、と茶化す童子に縹は唇を噛み締めて俯いた。
自分でもそう思う。そんな事、百も承知の上なのだ。
だが、そのまま許す事など出来る筈も無かった。
黙り込んでしまった縹を見て童子はふっと目を細めた。
「…止めはしないが程々にな。後悔するなよ?」
陽炎か何かの様に童子の姿が掻き消える。
濃く、鮮やかな緑の色をしていた童子の双眸に何処か既視感を覚えたのだが、それは何だったのか……
「…………。」
縹が意を決する瞬間でも見計らっていたのか、再び彼が顔を上げたのと同時に天門が開いた。


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