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羽那陀(禮晶)完

場所が変わり、神仙の世界。
最高権力者は天帝陛下こと縹(ヒョウ)。
強大な力の持ち主なのだが普段の彼は結構……いや、かなり適当でいい加減な性格の御仁なのだ。
お陰で執務が滞る事もしばしばであり、補佐官兼親友である水蛇(スイダ)の気苦労と眉間の皺は絶えない。
縹が半分べそをかきながら水蛇に拳骨を食らって、牧羊犬に追い立てられる牛か羊よろしく執務室へ連行される様子も今では『日常よくある風景』だ。
気に留める者など誰もいないのだ。
……もはやどちらが主君か臣下か分からないが、それでも世界が平和に回っているのは縹の仁徳と此処ではしておく事としよう。一応。

「お帰り、水蛇。片付いたか?」
「まだ骸は出てないがもう死んでいる頃だろう」
人界で水の妖魔が水神と身分詐称をして人間から贄を搾取していた事が分かり、水蛇はその討伐に今まで軍を率いて人界へと赴いていたのだった。
「御苦労さん。で、土産は?」
水蛇の眉間の皺が当社比三割増。
だが決してお買い得品ではない事は明らかである。
「土産だと…?」
「だって久々の人界だぞ。土産の一つや二つ……」
縹はただならぬ殺気を放っている親友から慎重にそろそろと後ずさった。
今回討伐した妖魔にでもこれ程の殺気は放たなかっただろう。何か理不尽。
「書類ここまで溜めるアホに土産なぞあるか!」
「え、だって出発前にちゃんと頼んだじゃん」
本当に何かがぶちっと切れる音を聞いた気がした。
水蛇の手には剣が握られている。但し、鞘無し。
じりじりと後退する縹の背に何かが触れた………後ろを見ると壁だった。逃げられない。
次の瞬間、縹の絶叫が響き渡った。

……これもまた、日常よくある風景。
天気・快晴。本日も神仙世界は平和である。


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あきゅろす。
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