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妖(和麻)完
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 一方天花は絶好調だった。それなりに強い妖怪を喰うことができたため最低二週間は妖力に困らない。
「今夜は結構いい獲物が多かったな。そう言えば気のせいか最近やけに強い妖怪が出てくるようになってきた。どうしたんだ?」
天花の考えは間違っていなかった。現に各地の妖怪が天花たちのいる雑木林に集まってきていた。彼らの目的は自分たちの妖力を補うこと。この一週間にかけてたびたびものすごく強い妖力がこの地域で確認されているからだ。彼らはその妖力を持つ妖怪を喰って我が身を保たせようというのだ。そのような事態が起こっているとは勇人はもちろん天花さえ知らない。
 そろそろ帰ろうかと天花は伸びをした。
「!」
再び天花は例の強い妖力を感じた。しかも、先日とは違い雑木林の外、つまり勇人たち人間が住む街から出ているものだった。
(嘘だろ、俺はさっきまであそこにいたんだぞ。けど妖怪一匹見なかった。一体どうなっていやがる!)
天花は妖力の出所に飛んで行った。天花は徐々に妖力の出所に近づくにつれてますます不思議に思った。今天花は確実に勇人の家に向かっているからだ。
(あのときと似ている。この妖力と勇人とは関係があるのか?)

 予想が的中し勇人の家に着いた天花が見たのは信じ難い光景だった。勇人は尋常ではない速さで真っ白な用紙を真っ黒に埋めていた。そして何より信じられないのは勇人自身があの妖力の出所だったということだ。
「勇人!」
天花は大きな声で呼びかけるが返事は無い。ただ瞬き一つせずに手を動かしていた。ところが用紙が埋まるや否やぷっつりと妖力は消え勇人は眠り込んでしまった。その一部始終を見ていてあることが天花の頭の中をよぎった。それは妖怪たちの間では知らない妖怪はいないという程有名な噂だった。


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あきゅろす。
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