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雅-miyavi-
理由


もともと、住んでる世界が違ってた。

私の事を知ってる人なんて世界中合わせても3桁でおわる。
でも、彼の事を知ってる人は世界中にいっぱい居て、きっと1億とかになってしまう。
そんな人と私が一緒にいれたことが不思議。

そう思って過ごしてきた。







今から数年前――――


『突然スマンな』

電話なんて珍しい。いつもはメールで済ませるのに。

「珍しいね」

『文字は嫌やねん。こういうことは…ちゃんと声で伝えないと』

「?」

『本当は直接言っときたかったんやけどな…』

「…どうしたの?雅」



話し方がいつもと違う。なんか暗い。嫌だ。なんか嫌。




『別れてほしいねん』

「………」

『スマン。突然』

「……私のこと、嫌いになった?」


嘘だ。絶対…嘘に決まってる。
だって、ここ最近ケンカもしなかったし、いつも通り一緒にいたじゃん。
嫌いになる理由なんて無いでしょ…?



『…これから先の俺ん中に、名前は必要ないねん。せやから、もう電話もメールもせんといて』


いつもより早口でまくしたてる雅。

「…わかった。今までありがとう。仕事、頑張ってね」




(スマンな…これが俺の決断やから)








あの日から何回が春が来た。


雅はビジュアル系の中でもトップクラスの人気がある。
あの時から人気だったのに、今となっては手も届かぬ存在になってしまった。
でも、それはちゃんと成功したってこと。つまりは、私と別れて良かったってことになる。



メールと電話はするなって言われたけど、いまだに私の携帯電話には番号とアドレスが登録されている。
勿論、別れてからは一度も連絡をとっていない。
取れないかもしれない。確実にアドレスは変わってるはずだから。

でも、今からメールを送ります。

届かなくて良い…でも、送らせて下さい。









『 お久しぶりです。
 今となっては話すことさえ出来ない存在となりましたが、それはお仕事が上手くいっている証拠なので、私は嬉しいです。
 私も、時々ライブに行き、その度に貴方から元気をもらっています。
 雅-miyavi-というアーティストに出会えて、本当に良かった。
 私はいつまでも応援し続けてるから。何があっても挫けないように。

今までありがとう。さようなら。

名前  』



  送信。


これで、さようなら。これからはファンとして、雅の事を応援できる。










3分が経った。

おかしい。携帯会社からメールが来ない。届かなかったなら、メールが来るはず……





じっと待っていると、携帯のメール受信音が鳴った。

やっと来たか。




と、思った。











『雅』


サブディスプレイに表示されている文字は送信相手





の名前だった。








『 久しぶりやな!元気にしとった?俺は知ってるとは思うけどバリバリ元気やで。
 つーか…メール送られてくるん、ずっと待っとったんやけど…
 ヒドいなー名前は。……………スマン。俺の方が数倍ヒドいな。
 何で別れようって言ったんか、説明不足やったやろ?
  
 明日、午前10時に○○○に来て。直接話したい   

                          from俺様だぁーれだ?!』



「雅ー」

ライブの時に言ってる言葉。


「説明…か。そんなの聞きたくないんだけどな」

とは思ったものの、雅と話したくて待ち合わせ場所に行くことにした。
 










待ち合わせ時間より10分早くついた。

午前10というだけあって、気温はまだ少し低い。



「名前ー」



前方からの声。
そこには雅がいた。


「めっちゃくちゃ久しぶり!少し美人になった?」

「…冗談言うな」

でも嬉しかったり。


「とりあえず、どっか店はいろ。薄着で来たから寒い…」


そんなわけで喫茶店に入る。
注文を済ませ、また話に入った。



「俺な、別れてから電話番号もアドレスも変えへんかったんやで?
勿論ながら、変なメールきたけど『失礼ですが誰?』とか無視とかで乗り切って」

「……何で?」

「何でって、そら決まっとるやん。いつ、名前から連絡来るかなーって待ってたんよ」
「もっと分からない…」



そこに注文したカプチーノたちが来た。



「その前に、別れた理由や」

「うん」

あんまり、聞きたくない。


「…あん時、すでにアメリカに行く気やった。それに、仔雅も増えてたやん?俺、名前の事が心配やった」

「だから別れたの?」

「それもあるし…俺ん中で名前ってデッカイ存在やったから、仕事の時もたまに頭に浮かんできよるねん。
せやから、仕事に集中するためにも別れた。ゴメンな…冷たい言い方して」

「ううん。ちゃんとした理由があるんだもん。謝る必要ないよ」




なんか、自分が凄い馬鹿だって思った。
雅も考えて考えて決断したっていうのに。





「ま、説明はこんくらいやな。別れてから、連絡先変えなかったんは、名前が何時でも俺と連絡とれるように。
メールすんなとか言ったけどな」

そういって、雅は小さく笑った。

「連絡が来いひんかったら、名前はもう大丈夫って」

「じゃあ、あたしメールしちゃったから大丈夫じゃないってことだね」

「せやな。で、まぁ…なんつーの?そんな君は俺とピッタリお似合い!」

「………」


頭がクラッシュした。













「俺と、付き合うて下さい。今の俺は、お前ん事を護れる自信あっから」



思わず涙が流れた。



「ばっかやろー…言われなくても付き合うってば…」












今でも遠い存在の貴方。
でも、家に変えるとすぐ隣に居てくれる。







「ただいまー」

玄関からの声。
台所から玄関へ走る足音。

「おかえり、雅」

「疲れた…抱っこ」

「ムリだから。身長が180越えしてる男を抱っことかムリです」

「しゃーないな。俺が抱っこしたる」

「うわぁ…!降ろして!久しぶりすぎて恐い!高い!!」









FIN





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あきゅろす。
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