【玲汰】水滴 激しく降る雨は止む気配を見せない。 制服はとっくにびしょ濡れで、下着にまで染みてる。いつもなら気持ち悪いって思うはずなのに、何故だか今は思わない。こんな自分に違和感を感じる。 「泣けない」 本当に辛いと涙って流れないのかな。それとも空が泣いてくれてるから?もう訳わかんない。 なんであんな奴好きになったんだろ…私ってイカれてる。 フェンス越しに下をみれば色んな色の傘がたくさんあった。もう放課後か…ってことは私、2限も雨に打たれてたんだ。ほんとどうしたんだろ。 でも、まだ帰りたくないな。 びしょ濡れだから寄り道もできないし。 キィ―――… 錆びた扉の開く音がした。 やだ、変な奴って思われる。 「びしょ濡れじゃん。何してんの」 この声は聞き覚えがある。 話したことは無いけど、名前くらいは知ってる。同じクラスの鈴木玲汰。 「放っといて」 「何かあった?」 「関係ない」 声が近くなったと思ったら鈴木は隣にいた。でも、ムカつくことに傘をさしてる。 「傘さすくらいなら中に戻れば」 「外にいたいから傘さしてんだよ」 「鈴木ってよく分からない」 「玲汰な。俺もお前がわかんね」 なにコイツ。さりげなく名前で呼べと? 「名字、一人で溜め込むなよ」 「…………」 「俺ならいつでもお前の話聞いてやるし、お前のこと助けるから」 「………」 なんで初めて話したアンタにそんなこと言われなきゃならないの? なのに…すごく安心した。さっきまで涙なんてでなかったのに、今は嘘みたいに涙が流れてくる。 すると、玲汰の腕に引っ張られた。 「俺の胸板貸してやるよ」 「…薄っぺらいね」 「う、うるせ!」 そうして、どれぐらい泣いたのかな。 雨は小雨になってて、門にも生徒は見当たらなかった。 「ごめん、玲汰まで濡れちゃった」 「気にすんな」 私を抱き締めててくれた玲汰は傘をさしていたけど、カッターシャツは私から伝った雨で濡れていた。 「ありがとう、玲汰。……はぁ、帰らなきゃ」 小雨になったとはいえ、雨は降っている。校舎には入らないけど、屋根のあるところの下に座った。 「帰りたくねーの?」 「…まぁ、こんな格好じゃ不審がられるし、色々」 「じゃあ保健室にいろ」 「でも、先生は?」 「多分、カラオケ」 「は?」 カラオケってあのカラオケ? 学校の先生ってそんな職業だっけ? 「鍵は俺が預かってるから。あそこ乾燥機あったし」 「玲汰は?」 「俺は部活あっから部室で乾かす。終わったら来い」 「うん」 少し寂しいと思ったのはまだ言えない。(わり、忘れ物した)(わぁあ、今着替え中だってば!)(わわわりぃー!見てねーから!!)(だったら早く出てってよ!) ――――――――――――― 何がしたかったのやら。 [*前][次#] [戻る] |