ここは猫しかいない、猫の王国でした。 この国には三毛猫や虎猫、シャム猫などしかいませんでした。 ―この黒猫たちを除いては。 「なぁ黒猫」 黒猫はゆっくりと喋りました。 「なんだい?黒猫」 黒猫はゆっくりと返事をしました。 「おれたちの名前を決めないか?ややこしくてかなわん」 すこし大人びた声の黒猫が、敷き詰められた石の地面をてくてくと歩いてゆきます。 「…じゃあ僕はクロがいいなぁ。」 落ち着いた声の黒猫が、敷き詰められた石の地面をてくてくと歩いてゆきます。 「…おれもクロがいいんだがなぁ。」 「まぁまぁ。言ったもん勝ちでしょ。」 「思ってたのはおれが先だぞ?」 みるみる二人の顔がこわばっていきます。 「そんな事分からないじゃない!」 「だいたいお前はいつも―」 かぁ。 そんな二人の真上で、森に帰るからすが大きく一鳴きしました。 二人が空を見上げると、絵の具をひろげたみたいにまっかな空が広がっていました。 それはふたりが大好きないろ。 黒猫と黒猫が、足をとめて目を合わせました。 「…帰ろうか、黒猫?」 「ああ。帰って飯にしよう、黒猫。」 二人は笑顔でお家に帰って、仲良くごはんを食べて、仲良く二人で寝ました。 こうして二人の毎日は喧嘩しながら、仲良くしながら、ゆっくりゆっくり進んでゆくのでした。 *** 喧嘩するほどなんとやら。 続きを載せるために掘り出してみました。 古くてばっちい…! [*前へ][次へ#] |