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拍手ログ3

08/03.24〜04.06

「今日でこのグラウンドともお別れか…」
 灯も暮れかかり、夕日がグラウンドで汗を流す後輩達をまるでキャンパスの中に描かれているかのように映す中、花井はポツリと呟いた。
 卒業式が終わり、後輩達が涙ながらに見送ってくれたのはついさっきの話。教室で写真を撮りあい、卒業アルバムに寄せ書きをして、次はいつ会えんのかなー!?なんて始終笑いっぱなしだった。
 一人、また一人と校舎から姿を消していく中で、約束もしていないのにこうして十人がバックネットに自然と足を運んでしまった。
「そうだな…」
 巣山がグッと奥歯を噛み締め、花井の漏らした言葉に反応する。
「オレは泣かないよ」
「田島…」
「泣いたらそこで終わっちゃう気がすんだ」
 背筋をしっかりと張り、その場に立つ田島が泉の中でやけに印象的に映った。真っ直ぐにグラウンドを見つめる眼差しは三年前と何ら変わりはない。
「お前らしいよ」
 優しげな目で田島を見つめる花井に、沖と西広も顔を合わせてほんの少し笑った。

 幾度となく肌で感じた金属音、飛び交う掛け声に笑い声。影が地面に縫い合わせ、足が張り付いたみたく誰一人としてその場から動けずにいた。
「オ、オレ…」
 張り詰めた空気の中、遠慮がちに、でもハッキリと三橋が何かを訴えかける。
「どうした?」
 阿部が肩から提げていたショルダーバッグを地面に下ろし、そのまま下から見上げると、三橋は拳を握り締めてからスゥと息を吸った。
「投げ たい」
 力強い言葉と吸い込まれそうな眼差しに全員が息を呑み、三橋に釘付けになった。ほんの十秒にも満たない沈黙がやけに長く感じ、それを破ったのは誰かがフ、と吐いた息。
「………やっちゃう?」
 自信なさそうにポツリと言った巣山の顔はニヤけていて。
「っしゃ、いこーぜ!!」
 後押しするように飛び上がった田島の背中に場の空気が興奮しだした。
「あいつらぶち負かしてやんぜ!」
「ひょえー、泉ってば過激ぃ!」
「水谷、今日はエラーなしだかんね」
「ちょ、栄口ひでーよ!」

「おーーーい!レギュラー集まれーーーー!!」

 花井の声がグラウンドに大きく響き渡り木霊した。次々と金網を越えていく仲間達に目を奪われている三橋。その背中を阿部が叩き、夕日に映えるその笑顔は生涯忘れられないものとなる。
「行くぞ、三橋!」
「―ッうん!!」
 きっとあとで声を上げて泣いてしまうんだろう。だけど今この時間だけは心の底から笑える。
 大好きな仲間達がいる、あの場所で。


青空の下で、また




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