拍手ログ8 (09/02.12〜04.18) そういえば少し前にもクラスの女子から花井は彼女がいるのかと聞かれた事があったと田島は思い出す。何で本人に聞かないのか問うと真ん中のコが恥ずかしそうに俯き、その右隣のコに突然頭を叩かれた。 「っとに田島はデリカシーないんだから」 その時は言葉の意味も叩かれた意味も分からず首を捻るばかりだったけれど、今思うと俯いたコは花井の事が好きだったのだと分かる。でも本人には聞く勇気がないからいつも一緒にいる田島に聞いてきたのだろう。それも友人越しにだったけれど。 さっきまでの自分はあの時のコと同じだ、泉に背中を押されるまでウジウジしてるばかり。そう思ったら今度は別な気持ちが浮き出てきた。 「なんでオレ、あんなに変な感じだったんだろ」 花井の好きな人を思い浮かべたら誰かを想っている花井なんて嫌だと思った。花井の隣に誰かがいるなんて想像もしたくない。考えただけで胸がぎゅうと締まり泣きたくなった。 「田島?」 顔を上げた田島の目に花井の心配そうな顔が広がる。 「花井…」 考えに耽っているといつの間にか中庭に着いていて、泣きそうな表情のまま田島は花井の前に佇んでいた。花井を目の前にして田島の中に広がるひとつの感情、それは花井を誰にも渡したくない、独占欲。 止め処なく湧き出る感情に田島の心は抑えきれず、堰を切ったように花井の腕を掴んで揺れる瞳を向けた。 「ど、どうした?腹でも減ってんのか?」 そんな田島を受け止めつつ、普段とは違う田島の表情、行動に少なからず驚いた花井は咄嗟に言う。そうしてから少し困ったように唇の端を上げた。 「花井って、ほんっとデリカシーねぇよ…」 この気持ちが何なのか田島本人はまだ分かっていなかったけれど、今花井から欲しかった言葉はきっとこんなものではないのだという事はハッキリと分かる。あの時の右隣のコと同じ台詞を吐きながら、田島は大きなタメ息を長々と吐き出した。 誰かこの気持ちの名前を教えて |