土沖 overloaded(過去拍手) 「細ぇな」 俺の着物を剥ぎ取って、肌を撫で回しながら、土方さんがまた言った。 吐息混じりのその台詞、もう聞き飽きたけど、腹が立つ。 そりゃ、アンタや近藤さんに比べたら細いかも知れない。 でも、改めて言われるのは、ムカつく。 「…鍛えたって、…ん…、肉、つ、かね、もんは…」 胸元に這わされた舌の動きに邪魔されて、途切れ途切れ。 「そうじゃねーよ」 「な、にが」 ちゅ、と、吸われたのは胸の赤み。 「んんっ…」 「…そういう話じゃねーんだよ」 「…じゃ、ふ、ア、どういうはな、…」 もう片方は指先で嬲られ、脚の間には膝を割り込まされて、更に息が上がる。 「……別に」 嘘。 本当は、知ってる。 アンタが俺を細い細いと言う日は、決まって昼間、俺が若すぎると嘲笑われた日。 俺に掛かる真選組一番態隊長という肩書きの重みに比べて、この肩が頼りなさ過ぎるって、言いたいんだろ。 「ば、かじゃ…ねーんですか、アンタ」 反論の代わりに、今度は強く乳首を吸われた。 「あぁ…ッ」 アンタ頭いいくせに、なんで、俺のことになるとそんなに馬鹿なんです? アンタの肩だって、大して太かねぇですよ。 鬼の副長とか、言われてますけどねィ。 俺と十も違わねーアンタが、侍ごっこと虚仮にされる芋連中の集団の、一番前に出て。 非難の矢面に立とうとしてること、俺は好きじゃねーんでさァ。 「…そう、ご…」 ドキリ、顔を覗くが、その目は変わらず閉じられている。 規則正しい寝息も、そのまま。 (…人の名前、寝言で呼んでんじゃねーよ、変態…) 自分を抱きしめたまま穏やかに眠る、その恥ずかしい男が、昼間は「鬼」と呼ばれていること。 (笑わせる…) 捕り物の後で疲れてるくせに、俺が心配で抱きしめに来たんでしょう。 『…お前は、よくやってるよ』 眠りに落ちる直前、アンタが呟いた言葉。 普段、俺が何やったったって褒めやしねぇくせに。 「俺は、大して気にしちゃいねぇんですよ」 そんなガキが隊長とは真選組も陋劣なものよ、昨日はそう笑われた。 笑った男は、アンタが斬った。 アンタ、鬼になるには、まだ優しすぎまさァ。 【言い訳】 「overloaded」は日本語で「過積載」。 積み過ぎ注意。 お互いに、ちゃんとチェックしておきましょう。 [戻る] |