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横に並んだら、有弘が不機嫌そうに手を伸ばしてきた。


「な、なに」


「髪、他人に触らせるなよ」


有弘に染められた髪を、さら、と掬われた。


「あの転校生にも、保健医にも」


…そういえば朝の教室で天根に髪を触られた時、屋上まで引っ張られてクチに指を突っ込まれたっけ。今思えばあれは、俺が天根と話してんのを怒ってたんじゃなくて、髪を触らせたせいで不機嫌だったのかも。


わかりにくすぎるよ、有弘。


横を歩く幼なじみ、兼恋人、って言っていいよな、もう。とにかく有弘を愛しく思いつつ、階段を上ろうとした。んだけど。


「…あ、ごめん有弘。今日、学校無理かも」


「…どうした?」


「足が、まったくあがらない」


鞄は有弘が二つとも持ってくれてるし歩くのはなんとかなっても、階段はかなりきつい。初めてだったせいもあるだろうけど、朝からエッチをしたら一日中大変なことになるみたいだ。教訓。


「…もう帰るか」


「ごめん」


「いや、……俺が悪い」


さっきのことを思い出してんのか、有弘が気まずそうに目を逸らした。心なしか顔も赤い。…なにその反応。可愛いとか思ってしまうよ。


「俺別に一人でも帰れるよ」


「ばか。そんなフラフラな奴一人で帰せるか。いいから帰るぞ」


腕を引かれて、正面口の方へと二人で歩き出した。


なんだよもう。


今まで冷たかったのが嘘みたいに、今日は優しい。ここ一ヶ月くらいの溝が簡単に埋まるくらい。


この未来のために今までの日々があったんなら、一週間前のつらいことも全部幸福に感じてしまうよ。


誰かに見られたらダメだから手は離されたけど、有弘は俺の横を歩くためにいつもよりゆっくりめに歩いてくれた。


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