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「失礼しまーす」


ガラガラ…ッ


…あれ?


エプロンつけたまま早速保健室に来た俺ですが、保健室には肝心の高本の姿がない。


「…っぁ、…ん」


……………ん?


なんか………カーテンに影…?


そして小さな声。たぶん女子。


それからギシギシと軋むベッドのスプリング。


………これはまさか。


「………………」


…………空気を読んで、出ていくべきか。いや、でも俺はれっきとした怪我人なわけだし、高本の趣味につき合って俺が出ていくのはおかしい。


…自分で手当てするか。


高本は保健室への来訪者に気づいてるだろうに行為をやめる様子はない。女子の方は堪えてるんだろうけど、たまに喘ぎ声が聞こえるのがちょっといたたまれない。


…せめて鍵かけろよ。


女子は必死なのか俺の存在に気づいてないみたいだし、出来るだけコッソリと動く。とりあえず絆創膏だけでもとゴソゴソ棚を漁っていたら。



ガシャーーーンッッ



………棚から銀の皿みたいなのが降ってきた。…多分ゲロはくやつ。いや中身は入ってないよ。入ってたら嫌だけど。



「…………」


我ながらドジだ。


カーテンの向こうの影は当たり前だけどやっと動きを止めたし、ギシギシっていう音も止まった。うん確実に気づかれたよな。どうしようかコレ。



パニクってどうすればいいのかわからずに棚を漁る格好のまま固まっていたら、ベッドがギシッと動いた。


カーテンの影がユラッと揺れて、


ファスナーを上げながら高本が現れた。
(サイテー!)


心底めんどくさそうに下を向いて頭を掻いてため息をつきつつ。


それから顔を上げた高本と目が合って、ワンテンポ置いてその目が、ちょっと見開かれた。


「……佐々木……?」


俺はそれを固まったまま見てて、何も言わずに頷いた。うん、佐々木だよって意味で。


「………」


カーテンの中にいるはずの女子は出てこない。まぁ俺に顔見られたらヤバいと思ってるんだろうけど。


それっきり何故か高本も固まってしまって、三人の人間がいるはずなのに何故か物音一つしない。奇妙な時間。


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