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「あ、俺はそろそろ行かないと。…じゃあ安里くん、海斗をよろしくね。海斗、がんばってうちの学校来るんだよ。高校は同じとこ受かったんだから大丈夫。じゃあね」


バイバイ、と手を振って、結城さんがちょっと急ぎ足で去っていく。…だからなんでなんだ。見なくてもなんとなくわかる、隣から溢れる不機嫌オーラ。


「……」


俺はなんも悪くねぇ。悪くねぇよな。そして結城さんの発言も別に何の問題もない、単なる世間話だったよな。なんで安里がキレてんのかはわかんねぇけど、なんとなく今日は痣が出来そうな予感がする。


「………」


「…あ、安里?」


「黙れ」


「…」


理不尽だ。そのまま不機嫌オーラ全開で歩き始めた安里の後を、刺激しねぇようにとにかく黙って追いかけた。






ガンッ!


家につくなり脳みそが揺れた。久々過ぎて、咄嗟には何が起きたかわからねぇ。


「…っ」


頭を殴られたなって気づいたのは、安里ん家の廊下に倒れて安里を見上げてから。とりあえずなんで怒らせたのか必死で考えるけど、やっぱりわからねぇ。


「…っ安里、なんで」


「…………」


久々の頭の痛み。打ち付けられた背中の痛み。せめて理由がわかれば謝ることもできるのに、それさえわからないんじゃ俺はどうしたらいいんだ。俺を見下ろす目は冷たい。


「……海斗、おまえ、誰の犬だ」


「…お、れは、安里の」


怒らせないように、怒らせないように、安里の言葉の意味をしっかり反芻して、よく考えて口から吐く。






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