35 「…な、なんだよ」 今日はいいことがありすぎた。もういいことなんかないんじゃねぇかと、身構えてしまうのもしょうがないだろ。 「おまえ、俺のこと好きだってわりには、抱かれんの喜ばねえよな」 「…抱かれる?…無理だろ、俺、男だし」 「……」 そりゃ、女になって、安里に抱かれてみてぇなとは思うし、もしそうなりゃ死ぬほど嬉しいだろう。 けど、それは無理だ。 それこそ、生物学的に。 「海斗、ゲイって知ってるか」 「え、おぉ…」 いきなりなんだ。 そりゃまぁ、知ってる。 下手したら俺もそこに分類されるんだろうってこともわかってる。 「あいつらも、sexするんだ」 「え、どうやって!」 「……」 安里の顔が、青ざめた、気がした。 「……安里?どうしたんだよ」 「…何で俺がこんなことを。海斗、ゲイはな、肛門性交って言ってな、肛門でsexするんだ。…詳しくは、電話で龍に聞け。あいつの専門だ」 「…つまり、」 「おまえが俺にされた死ぬほど痛い酷い仕打ち、あれが抱かれてるってことなんだよ」 「……」 ちょっと、待ってくれ。 情報が入ってくる速度が、処理速度を大幅に上回った。 肛門性交?肛門を使うってことか? 会長が専門ってことは、会長はゲイ?つかなんで電話でなんだ。 …そんで、俺は、つまり安里に抱かれた、のか。 「…………っっ」 「わかったかよ。どっかでから回ってるとは思ってたが、まさかこんなことだとは思わなかった…」 「………っ嘘だろ、俺…」 「ん?」 すげぇ、すげぇ嬉しいことじゃねぇか。あんな苦しいもんでも、そういう行為なんだって知ったら苦しくなんかねぇよ。 なんで、その前に知らなかったんだ。 「なんかすげぇ、もったいないこと、した気がする…」 「……は、阿呆だな、お前は。…なら、もう一回抱いてやるよ」 「…っ」 床に倒されてる俺に、めちゃくちゃ綺麗な顔が覆い被さってきた。 [*前へ][次へ#] |