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「……おまえに、言いたくないわけじゃなかったんだ。おまえは聞かねえし、改めて言うのも変だろ」


また、ぽんぽんと頭を撫でられた。

なんか、優しすぎて調子が狂う。

…いや、いつも酷いやつなわけじゃねぇけど。つか、確かに、荒れる前はそれなりに優しかったっけ。荒れてるときの印象が強すぎて忘れてた。
…まぁ、理不尽な命令とかはしてたけど。いきなり殴ったりとかは、あの時だけだ。


「…俺さ、聞いたら、おまえには関係ないって言われた覚えがあるけど」


「…そんなこと言ったか?機嫌悪かったんだろ。今聞けよ」


「え…荒れた日、帰ってきたら甘いにおいしたから、女のとこ、行ったのかって…」


俺を部屋に置いたまま、出ていって帰ってきたら甘いにおいがした。あれは、正直かなりへこんだ。

そしたら、また呆れたように安里がため息をついた。うん、嫌な予感しかしねぇ。


「…おまえ、勝手に想像して落ち込むのやめろ。あれは墓参りだ」


「……ってことは、あれは、その花のにおいかよ…。どれだけ落ち込んだと思ってんだよ…」


もう、どっからだ。
なんかがから回ってたのは理解した。けど、その根本がどこなのか最早わからねぇ。


「…は、それでか。あのあと、おまえ自分から誘ってきたよな」


ニヤニヤ笑う、綺麗な顔が腹立つ。


「しょうがねぇだろ。俺は男だし、女に勝てるわけねぇから、なんとかしねぇとと思って…。たまってんなら、使ってくんねぇかなって…」

「…」


そこまで言って、なにかを失敗したことに気づいた。さっきまで笑ってた顔が、明らかに苛立ってる。


「……おまえ、ふざけてんだろ。あのな、男なんか簡単に抱けるもんだと思うなよ」


「…え、おい、機嫌、悪くねぇか…?」


「当たり前だろうが。性欲処理で男使えるほど飢えてねえんだよ」


「…っおい、うわ!」


だん!つうかゴン!と勢いよく床に倒されて、なんかで怒りスイッチが入ったらしいこえぇ顔の安里が見下ろしてくる。


「海斗、まず、俺への認識を改めろ」


「…っつ、…?」


「…さっきから聞いてればおまえ。俺が女を抱いてるような誤解してるみたいだがな」


頭を打ってぼやける視界と思考。


「…龍と違って、恋人がいるときに他の女抱けるような神経じゃねえんだよ」


「…っ」


安里の言葉で、ぼやけてたのが、一瞬で晴れた気がした。

内容はまだあんま入ってきてねぇけど、とにかく、安里の口から恋人って言葉が出た。それが、心臓がぎゅっと握られたみてぇな、変な感じで嬉しい。

嘘みてぇだ。




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あきゅろす。
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