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「そういや結城さん、帰ってきてるらしいぞ」


「………は?」


「ほんとかどうかはわかんねぇけどなー。…あ、じゃあ俺そろそろ行くわ。ごちそうさま!」


せっかくもらった差し入れを食い散らかして、微妙にざわざわする台詞を残して、そいつは去っていった。


「戻って、きてんのか……」


いや、違う。

そりゃ、ずっと尊敬してた相手だし、三年も会ってねぇからやっぱ会いてぇけど、今は駄目だ。俺は今は安里のことだけ考えとけばいいんだ。

…安里に知られたら、やっぱ、昔の飼い主がいいなら、と言うだろうしな…。


…元気でやってくれてんなら、それでいい。




俺もしっかり仕事して、そろそろ閉会式、という頃。


ガラララ…


「…疲れた」


「安里!」


安里が、生徒会室に返ってきた。俺は留守を待つ犬よろしく安里に駆け寄る。

今までぶっ通しで動き回っていたらしく、いつも涼しそうなくせに今日はさすがに疲労が見える。というか、忙しすぎたのか少しイライラしている。

さっきやっと余裕が出来て、昼も食ってないらしい。


「大丈夫か。飲みもんと、これ、食いもん。生徒会の奴らがくれた」


「は、かわいがられてんな。あいつらペットに餌でもやる感覚なんだろう。よかったな」


「いや、それあんまよくねぇよ…」


安里がソファに座り込んだ横に俺も座ったら、ぐったりもたれ掛かって来た。その、支柱としての役目だけでも、疲れた安里の役に立ってると考えれば嬉しい。肩の重みが愛しくて、一ミリも動かねぇように気をつけてじっと肩の上の安里の顔を見つめた。


目を閉じて、ゆっくり呼吸を繰り返してる。もうすぐ閉会式って放送があったから、やっぱ安里はすぐ行かねぇとなんねぇだろう。


…日下が言ってたけど、会長はやりたくて生徒会長をしていて、安里はしょうがなくしているらしい。


会長の場合は、まぁ確かにあの人が他の人の下についてるのは想像つかねぇし、意外と行事好きだからなんとなくわかる。なんでも飄々とこなすし、見てれば向いてるのもわかる。


…けど、安里はなんでなんだろう。会長に言われたから、とかじゃ、そんなめんどくさいこと出来ねぇだろうし。日下に聞いても、なんとなくはぐらかされた。




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