3 「ポチ、ありがとな。一緒に飲もうぜ」 「え、いいのか?」 まだ喚いてた山元を遮った日下の言葉に、ちょっと驚いてしまった。 なんとなく俺は安里含めコイツラにまじで犬として扱われてると思っていたからだ。 …まぁ、安里は本気で犬として扱ってるけどな。 「ヒロ、こんなやつにやらんでええ」 また山元がなにか言ってる。 「トーラ。これは元々はポチのものだから、俺は貰う方だよ。ほら、先飲みな」 「さ、サンキュ」 日下いいやつ…!ったくそれに比べて…。後ろでぶつぶつ言ってる男は無視だ。 ん、と差し出された缶のフタはしっかり開いていて、そのことにも感動した。紳士的なやつだ。 ごく、と飲んだコーヒーの味は最高。冷えきっていた体にジワッと染みて、思わずホッと声が出た。 「あ、もういいから、日下飲め」 俺をじっと見ている日下に気づいて、慌てて缶を差し出す。 「そうか?ありがとなー」 日下がパッとうれしそうに笑った。なんか日下っていつもどっか演技がかってる印象があったんだが、今は本気でうれしそうだ。……そんなにコーヒー飲みたかったのか? とか思っていたら、日下に缶を渡すときにちょっと触れた日下の指先が、外に出てた俺より冷たくて驚いた。 「…あーあったけ」 日下は、受けとったコーヒーを飲まずに、缶を両手で挟んで暖をとっている。…もしかして、コーヒーが飲みたかったんじゃなくて手を暖めたかったのか? 日下の指先に、もう一回触れてみた。 「日下、手冷てぇな」 「ん?あぁ、俺末端いっつも冷えてんの。…ポチの手あったけぇなー」 「え」 片方の手で、手を掴まれた。 う、日下の手まじ冷てぇ…。 冷てぇけど…こんだけ冷たかったら、多分つらいよな…。 なんとなく暖めてやりたくて、その冷たい手を握り返してやった。ちょっとでも暖かくなりゃいい。 [*前へ][次へ#] |