15※
「…は、」
意識しねぇようにしてても、中のものが震える振動で嫌でも意識してしまう。素っ裸の俺のモノは、もはや布団に擦れるだけで限界を迎えそうになってやがる。
「……」
それでもしばらくは我慢していたんだが、やっぱ無理…もうだめだ。貧血で頭がくらくらする。
「……、」
あぁもう、起こすか。起こしたら怒られるかもしんねぇけど、ここで出しても怒られそうだ。だからとりあえず鎖だけでも外して貰えたら、と思って安里の顔を見たら。
もう、何て言うか、心臓がわしづかみにされたみてぇな、心臓をぶっ刺されたみてぇな、とにかくすげぇ衝撃が俺を襲った。
「…あさ、と」
「……、」
返事はねぇ。一瞬起きてんのかと思ったが、どうやらまだ寝ているらしい。俺は伸ばしかけた手を引っ込めて、布団に潜り込んだ。
安里が、何故か泣いてた。あの、殺しても死にそうにねぇ安里が。
……あぁくそ、あんなの頭から離れねぇよ。もう絶対このまま寝らんねぇ。
「…、」
見ちゃいけねぇもんのような気がして布団の中で丸まってた俺を、安里が抱き寄せる。一瞬、俺がなんかの支えになってんならそれで嬉しい、とか思った俺は、次の瞬間にまた心臓が止まりそうになった。
「………ポチ…」
安里が、そう呟いた。
ズキンッと心臓が痛んだ。死にそうなくれぇにバクバク鳴って、いつもは働かねぇ頭が、こんなときばっか高速で働いた。
…今のは名前を呼ばれたわけじゃねぇ。だって、安里は絶対に俺のことをポチとは呼ばねぇから。
俺は今まで名前で呼ばれる事が嬉しいと思ってた。安里がポチって呼ばねぇことが、俺が単なる飼い犬じゃなくて恋人であることの証のような気がしてた。
今ほど、安里が俺のことをポチって呼ばねぇことを悲しいと思ったことはねぇよ。
おまえがそうやって泣くほどの、おまえにとって本当のポチは誰なんだよ。
安里に抱きしめられてんのに、それを嬉しいと思えねぇ。目の前の安里は相変わらず苦しそうで、それは最近荒れてんのと多分関係があって、俺はそれをなんも知らねぇしどうやって支えていいのかもわかんねぇ。
俺は、女みてぇに安里を幸せにしてやることもできねぇし、にせもんで、本物のポチみてぇに支えになることもできねぇ。
安里のそばにいられんならどんなことでも受け入れようと誓った気持ちに嘘はねぇけど、初めて、それがちょっと揺らいだ。いや、逆らおうってんじゃねぇよ。ただ、そばにいてなんの役に立ってんのかと思ったら、苦しすぎてつれぇんだ。
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