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ガララッ


「!」


教室のドアが開いて、バッと日下に手を離された。


ドアんとこに立ってたのは、安里。


用事は割と早く終わったみたいで、こんなことならコーヒー飲まずに残しときゃよかったな、とちょっと後悔。


「安里っ」


さっきまであれだけツンツンしてた山元が、やけに嬉しそうにドアへと近寄る。


いや、まぁ、うん。山元がどんなにやなやつでもさ、あの姿見たら嫌いにはなれねぇよな。


安里はまるでペットにそうするみたいに山元の頭を撫でていて、俺もしてもらおうと近寄ろうとしたら、腕を冷たい日下の手に掴まれた。


「…ポチ。安里は、ポチとトラを同じように扱ってる」


「……?」


いきなり何の話だよ?


俺は安里のところへ行きたいのに。


振り向いて、ぐ、と腕を引いてみるけど、やっぱり離してはくれねぇ。


日下は、いつになく真剣な顔をしていた。


なにか緊迫した空気がフワッとそこを覆って、俺はなにを言われるかわからなくて少し身構えた。


「……俺は、安里とポチの想いは違うと思う」


「…………」


ズキ、とどっかが痛んだ。


日下に握られてる腕じゃなくて、もっと他のどっかが。


想いが違う?


俺が安里を想うようには、安里は俺を想ってないって?


そんなの。

とっくにわかってた…。つもりだった、けど、改めて言われたらやっぱりかなりキツイ。


つまり心のどっかで、俺は安里の気持ちを期待してたようだ。


…安里にとっちゃいきなり告ってきた変な不良だろうに、よくそんな期待を持ったもんだな、俺も。


「………」


なにも言えない俺が静かに落ち込んでんのがわかったのか、日下が慌てたように口を開いた。


「…いや、違う、そうじゃない…俺は、」


「帰るぞ、海斗」


ちょっと低い、安里の声が日下の言葉を遮った。


「えっ、…あ、あぁ」


安里の機嫌が悪い…ような気がする。


俺は日下の発言をとりあえず気にしないことにして、日下の手を振り払った。


俺を引き止めたときとは違う、力無く緩んだ手。


相変わらず、冷たい手。


「ポチ、ごめんな」


それから今まで聞いたことのないような暗い日下の声が、安里のもとへ駆け寄る俺の背中に小さく聞こえた。


けど、安里の不機嫌と日下の言葉に動揺しきってた俺は、その謝罪に応えることもなくドアまで近づいた。




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