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「踏み外しているように見えても、いい。おまえがいれば、なんて言われても、どう思われても、いいんだ、俺は。…わかるか」

「……わかる、」

「…だけど、おまえの母親とか、家族にとっては、簡単に受け入れられることじゃないんだよ。まず、おまえが先にそれを受け入れろ」


最後に、ぽん、と頭を撫でられた。

安里の言葉を、ゆっくり反芻する。


「…俺が、受け入れる」

「どんな親でも、俺を紹介して喜ぶことはない。少なからず悲しむよ」


わかる。あんまりわかってなかったけど、言われていることはわかる。可愛い嫁さんではない。可愛い孫も産まれない。それを喜ぶはずはない。
けど、やっぱり、納得はいかない。


「…安里の言うことは、わかるよ。けど、普通なんか、曖昧だろ。結婚して、子供産んで、って奴らばかりじゃねぇよ。じゃあ、子供産まねぇやつの親はみんな悲しんでんのかって言ったらそうばかりじゃねぇだろ」

「……」

「そりゃ、驚くだろうし、孫が産まれねぇのはやっぱショックかもしれないけど……でも、安里だったら、喜んでもくれると思う」

「……、おまえ、」


安里が何かを言いかけて、そのあと一瞬あんまり見たことない顔をした。すぐに片手で目を覆って、上を向いてしまう。


「安里?」

「……家族って、そんなもんか」

「……、」


小さく聞こえた安里の声が少し震えていて、たまらなくなった。
反射的に立ち上がって手を伸ばして、ソファに座る安里を抱きしめた。


「……ふ、なんだよ」


驚いたのか一瞬間があってから、笑って抱き返された。


「安里…」


「…俺には思いもよらなかった。そうだよな。俺の家族が生きてても、おまえを紹介したら喜んでくれそうな気がする」

「…っ」

「おまえとなら、本当にどんな道でも歩けそうな気がしてくるな」

「…安里!俺っあんま慣れてねぇからそういうの!」


いつの間にかこっちが泣きそうになっていて、誤魔化してしがみついた。ばれてんのかばれてないのか、また笑って抱き返された。

…あぁ、もう、大切で大切で仕方ない。

俺の家族が安里に酷いことを言うかもしれない。傷つけるかもしれない。

それは嫌だけど、安里が一人ぼっちはもっと嫌だ。

俺は、決心した。




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