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それからしばらく、俺の頭は安里の言葉に完全に支配されてた。相変わらず安里には勉強を教わってて、順調に知識を叩き込まれてる。

毎日会ってんのにあの話にはならない。安里は冗談で言ったのかもしんねぇとか思うけど、あの表情が、冗談じゃねぇような気がする。なんとなくだけどな。


「ポチ〜おまえ元気ねーなぁ」


今日は、久々に日下と山元と教室でダラダラしてる。安里と会長が引き継ぎで生徒会に顔を出してるから、待ってる。本当は勉強をしておけと言われたけど、いつのまにか集まってダラダラしていた。


「安里となんかあった?元気ない」


俺の前に座ってる日下が、頭をぽんぽんと撫でながら聞いてくる。


「…元気、ないか俺」

「ないよな、トラ」

「うざい。辛気くさい顔すんなや」

「……」


なんとなく、相談してみようかという気になった。結論は俺が出すにしろ、意見を聞いてみたかった。


「……な、お前らってさ、好きなやついんの」


「えっ」
「ぶはっ」


俺が言った瞬間、日下が目を丸くして、山元は吹き出した。きたねぇな。


「おーよっぽど悩んでんだな〜まさかポチと恋話する日が来るとは!」

「おい、安里との話聞かせてみろや」

「ちょ、そこ聞いちゃうのかよ!まぁ確かに安里もなんも言わねーし、興味はあるよな」


勝手に盛り上がり始めた。なんでこいつらこんな楽しそうなんだ。


「ほらほら、俺たちが聞いてやるよ」


「…俺の状況で、お前らだったらどうするかを聞きたいんだよ。だから、とりあえずお前らに好きなやつがいるか教えろ」


「えっ、トラは…いるよな!」


「まぁな」


日下はなにか慌てて山元に話を振ったが、山元は意外にもあっさりと首を縦に振った。


「コイツ高校卒業したら就職して、結婚するんだよ。幼馴染みと」


「え、本当かよ!」


驚いて山元の顔を見たら、山元は当たり前みてぇに頷いた。進学校のうちの高校では就職するやつすら珍しい。その上結婚とか、なんかすげぇ。色々考えてんのか、山元も。




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