Strawberry Kiss
朝食を取りにキッチンへ向かえば父さんの姿は無く今朝は早くに出たのだと母さんが知らせてくれた

だから家の中には朝食を作っている母さんと、それを椅子に座って待つ弟と私の三人だけ

普段は朝から新聞を読みながら成績について彼是五月蠅いから今日はツイているようだ

「小太郎、おはよ。」

「…おはよ。」

「……何してるの?」

こちらを見向きもしない彼はずっと自分の唇を触っていて、何をしているのかと覗けば酷く唇が荒れているのが分かった

乾燥するこの時期、それにリップクリームなんて塗らない彼のそこは荒れるばかりだろう

見ただけでも痛そうな唇に思わず「うわぁ」と声を漏れた

「痛む?」

「…痛い。」

「あ、こら。剥がすと悪化するでしょ?」

「…でも、気になる。」

だからってただでさえガサガサに荒れている皮膚を剥ぎ取らなくたって良いでしょうに

そんな事をするから悪化すると分かっていないのだろうか

「もー、リップくらい付けなさいよね。ほら、貸したげるから。」

「…なまえが、塗って。」

「小太郎はいつまでたってもお姉ちゃんっ子ねぇ。」

リップを受け取らない弟のとんでもない発言に眉を顰めたてみたがどうやら本気らしい

母さんも母さんだ、呑気に笑っていないでこの甘えたな弟を更生しようとは思わないのか

弟がここまで甘えたになったのは誰もそれを叱った事が無いからだ

「ほら、じっとしなさい。」

まぁ、一番彼を甘やかせているのは誰でもなく私なんだけども

食事前に塗るのはどうかと思うけど少しは醤油などの痛みが和らぐから良いだろう

リップを塗ってあげる、そんな些細な事でも我が弟ながらその素晴らしい眉目秀麗に緊張してしまう

これで味をしめて学校でもわざわざ教室に塗って、と頼みにでも来たらゲンコツを一発お見舞いせねば

「…甘い。」

「舐めちゃ駄目よ。登校前にリップ買いなさいね。」

「…なまえ、塗ってくれる?」

「それくらい自分でしなさい。」

やっぱり私の想像通り、でもそんな事してなるものか
言葉に続いて軽く頭をペチンと叩いても拗ねてしまうから手に負えない

呆れながら彼の隣へ腰を下してもうすぐ出来る朝食を待っている間ずっと隣から視線を感じる

駄目駄目、そんな可愛い顔したってもう塗ってあげない、自分で塗りなさい

「…じゃあ、俺も塗ってあげる。」

「私はそのくらい自分で出来る…っ。」

アンタと違って私はブラコンでも甘えたじゃないんだから

そう言いたかったのに、肩を抱き寄せられ目を見開く間も無く、甘い香りのするガサついた唇が押し当てられた

こ、この野郎!!

「…おすそわけ。」

「馬鹿!!」

ヘラリと笑う弟の頭を強く叩いてすぐさま普段は父さんの座る席へと移動する

とりあえず母さんに気付かれなかった事だけが幸いなんだろうか

だからって兄弟でキスなんてスキンシップの度が過ぎていて笑い話にもなりゃしない

「…甘い、ね。」

テーブルの向こうでたった今触れあった自分の唇を舐めた弟を、そろそろ本気で更生しようかと思う


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