帰って来たヨッパライ
☆と同じ設定でお楽しみ下さい
夫の帰りを待つのも妻の勤め、らしく私は初めて日付が変わっても帰宅しない彼を待っている
今まで同僚や友人と飲みに行っても必ず日付が変わるまでに帰宅していたけれど今日ばかりは仕方が無い
会社での忘年会、そうそう断れる事も自分だけ勝手に帰れはしない
たまには一人でご飯を食べるのも良い、そう思っていたのは最初の内だけで今は早く帰宅して欲しいと願うばかり
家の中に居るとずっとくっついていて離れないあの問題児が居ないのは開放的…でもやっぱり寂しい
「…小太郎?」
いつ頃帰るのだろうと思いながらテーブルを指先で軽く叩いているとインターホンが鳴った
こんな時間にお客は有り得ないしそうだとしたら不審者と見做して良い
きっと彼だとカーディガンを羽織り玄関まで向かってドアスコープを覗けばやはり彼が居た
自分で開けたら良いのに、鍵を持って出るのを忘れたのかな
「…なまえ、ただいま。」
「お帰り…お酒臭い…っ。」
ドアを開けた途端彼が抱きついて来たので驚くものの、彼から漂うお酒の匂いにがきつくてすぐに引き剥がした
すると普段なら一度くっつけば絶対に剥がれない彼が簡単に剥がれストンと廊下にだらしなく寝転がってしまった
多分酔っているんだろうけども、彼がお酒に酔う姿なんて初めて見た
普段なら絶対にどれだけの量を飲んでも酔わない
結婚式の時なんて悪ノリした友人達から次々に与えられたお酒を水同様ペロリと飲み干したくらい
だから彼は笊だと思っていたのにこの有様、一体どれだけの量を飲んだのやら
「廊下で寝ないの、風邪ひいちゃうでしょ。」
「…起こして。」
「無理言わないでよ。」
酔うと普段に増して甘えたになるようだ、これは今後お酒の量を控えさせなくては
私より大きい彼を立たせるなんて不可能
ただでさえ酔っていて力が抜けている相手だなんて私一人の力で起こさなきゃなんないんだもん
まさか会社の皆さんの前でずっとこの状態だったわけ?
後日佐助さんからその辺り詳しく聞く必要がある
「なまえ、起こして。」
「もー…。」
彼の酔った姿を見られるのは珍しいから良いけどこうも面倒だと溜息が漏れる
いっそ腕を掴んで引き摺って寝室まで運ぼうか
途中何処かで頭でもぶつければ少しは酔いが醒めるかも知れない
起こしてって言うくらいならいつまでも寝転がっていないで少しはシャキッとしてよ
背広が皺になったら自分でどうにかしてよね
「…ほら、手を出して。」
「………ん。」
「…っわ。」
「捕まえた。」
起こして欲しいと言うから手を貸そうとしたのに逆に引っ張られ腹の上で抱き締められた
なんてたちの悪い酔っ払いだろう、お酒臭いからあまり密着したくないのに
再び引き剥がそうと下に居る彼の胸板を両手で押して逃げようにも腰に回された腕の力が緩まない
必死に離れようとしている私を彼は下で楽しそうに見ているから酔っ払いと言えど手加減無しに一度脇腹を抓ってみる
しかし効果無し、ならば最終手段だ
「今すぐ私を解放して、自力で起きなきゃ三ヶ月別々の寝室ね。」
「…起きる。」
酔っていてもこのあたりはいつも通り、流石と関心してしまう
まぁ解放してくれたわけだし、重たい彼を運ぶ面倒な労働をしなくても良い
明日は仕事が休みだからお風呂は朝に入れさせるとして、今日はもう眠らせよう
「今日はもうパジャマに着替えてさっさと寝て。お風呂で眠って泥酔なんてされちゃ困るから。」
「…一緒に、風呂は?」
「私はもう済ませてるの。」
リビングに移動してソファーに座るとまた動かず馬鹿な事を言い出した
これ以上酔っ払いに付き合わされるなんて絶対に嫌だ
遅くまで待っていた私に感謝をして早く眠らせて欲しい
「ほら、パジャマ。」
「……風呂は?」
きりがない、これならまだ廊下でそのまま熟睡してくれた方が良かった
当然寝室まで運ぶ事はしないけれど風邪をひかないように毛布くらいはかけてあげる
泥酔していると言ってもただ甘えてくるだけだし無視して私一人だけ先に寝ちゃおうかな
「一緒にお風呂はまた今度。悪いけど私はもう寝るからね?」
「なまえ、お願い。」
「…だ、駄目。」
今のは危なかった、今になってようやく気付いたけれど酔った所為で熱を含んだ瞳で見上げられるのはかなりの威力がある
普段の彼のおねだりが攻撃力1,000とするなら今のは8,000、私の残りヒットポイントは2,000
流されちゃ駄目よ私、酔っていても相手が如何に危険かはこの身で思い知らされているんだから
「なまえと風呂が、良い。」
「だからそれはまた今度。」
「……今日、お願い。」
「…っもー!!分かった!!でも背中を流して上げるだけ…って、何?」
「風呂、入るんだろう?」
は?と声を上げても私を横抱きにした彼はクスクスと笑いながら脱衣所へと向かって何も言ってくれない
一人でちゃんと歩けてる、さっきみたいにフラフラしてない
待ってよ、酔っぱらっていたんじゃないの?
途中でお酒が抜けた?それにしても突然過ぎる
「ね、ねぇ…酔ってないの?」
「酔ったふりをして、甘えると良い。佐助から聞いた。」
つまり最初から罠だったのか
佐助さんめ、余計な入れ知恵なんてしてくれなくて良いのに
「一度きりの手だから…存分に楽しもうか。」
ニッコリと私へ微笑んだ彼を今後信用出来ない気がした
(騙された!!)
(ちょろいな。)
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