学生時代からの友人
今日の来客はあの上杉カンパニーの人間

それを耳にした途端自分の頬が緩んだのは周りの怪訝そうな反応を見てすぐに分かった

仕方が無いってーの、なにせあの社長の秘書であるかすがが来るんだからね

俺と風魔とかすがは同じ大学、彼女だけが一人違う道を歩んで行ってしまった

けれどこうして客として頻繁に訪れる事はあるから寂しいと思う事は無い

意外にも甘党なアイツの為に美味しいケーキをすぐに買いに行って、きちんとなまえちゃんのも選んだ

種類が違えど二人は良いセンいっているので二人揃えば最近流行りの美人〜なんてマスコミに取り上げられてもおかしくはないだろう

運の良い事に今日は風魔と上杉の旦那だけで商談するらしく二人は社長室で楽しくお喋りでもしているんだろう

そこに俺が美味しい美味しいケーキを持って登場、となればかすがの中で俺の株が上がるってもんだ

「やっほー、久しぶりー…だ、ね…。」

「なまえ!!お前はそれでも自分を秘書だと言い張る気か!!」

「やー!!だって私、本当に秘書なんだもーん!!」

ノックをして片手にトレーを持ったまま部屋に入り、惨状を目にして思わず一歩後退した

おかしいな、俺ってば疲れているのかな?

だってそうでしょう?

俺的には可愛い女の子が二人きゃっきゃと楽しくお喋りをしているのを期待してたんだよ?

なのにどうしてなまえちゃんは自分専用のソファーの後ろへ隠れて、かすがは般若の如く恐ろしい顔で怒鳴り散らしているんだろう

タイミングが悪かったかな?

そう思い何も見なかった事として静かにドアを閉めた

そしてやり直し、きちんと中に聞こえるようにノックをして扉をドアを開く

「やっほー、久し…もう、何してるの?」

「良いか!?お前が仕事だと思いしている事は全て仕事でも雑業でも無い!!」

「そんな事無いもん!!小太郎さん、私の事良い秘書だって褒めてくれるもん!!」

盛大な溜息を一つ吐いて垂れて来た前髪を乱暴に掻きあげた

なんとなく二人が揉めている理由も分かった気がする

なまえちゃんの仕事内容を聞いてかすがが怒ったんだろう

無理も無い、彼女は崇拝している上杉の旦那の秘書を必死に勤めているのだから

自分と同じである秘書のなまえちゃんが殆ど仕事もせずに秘書だと言うから頭にキた、そんな所だ

もしもここでそこにあるフカフカのソファーが彼女のお昼寝専用と分かればかすがは更に怒るだろう

「頑張ってる御褒美で、小太郎さんこのお昼寝専用ソファーを買ってくれたんだもん!!」

「そこに正座しろ!!そんな褒美があってたまるか!!昼寝なんて休日にしろ!!」

…なまえちゃん、わざとかな

自ら火に油注いでどうするの、いや、自分に与えられた御褒美を自慢したいのも分かるけどね?

そろそろ俺も傍観者のままで居るのはやめよう

そうでなければ彼女の首根っこを掴んで宙ぶらりんとしているかすががそのまま窓の向こうへと放り投げてもおかしくはない

「かすが、ちょっと!!こっち来て!!」

「佐助…お前、いつ来たんだ。」

「…相変わらずだね、お前。」

正直傷付いたが俺様の登場に気付いたなまえちゃんが視線だけで助けを求めているのでどうにかしなくては

彼女に泣かれるのは困る、後々俺が泣かしたと風魔に疑われ暴行を加えられるのだから

泣き出してしまう前にかすがに全てを暴露して実際彼女には何の悪気は無く、被害者である事を告げよう

ちょいちょいと手招きをすれば不服そうではあるがかすがは彼女を床にペタリと座らせて恐ろしい表情のままこちらへと歩み寄って来た

なるべく彼女に聞かれないようにしなくてはならないから不自然にも二人大きな観葉植物に身を隠しヒソヒソと喋る

「アイツ、自分が秘書だと言うんだが…風魔の女だろ?」

「厳密に言うとそうだけど…そうじゃないんだよ。」

「どういう意味だ、はっきりと言え。」

「うーん、だからさぁ…。」

かすがが小指を立てたのをやけにリアルに感じながらどう説明しようかと頭を掻いた

本当の事を言って信じてくれるかすらが不明だ

けどかすがだって少なからずは風魔がどういう奴かを知っている

だから必死に全て理解出来るよう順を追って説明をし終えれば、酷く呆れた表情を見せられた

「…アイツ、可哀想だな。色んな意味で。」

「まぁ、納得してくれたなら良いけどさ。」

色んな意味がどういう意味なのかはあえて聞かない、なんとなく俺もそれが分かるから

これで二人が揉める、と言うよりはかすがが彼女を怒る事だって無いだろう

寧ろ今じゃ酷く同情の視線を向けていて、相変わらずソファーの後ろへと隠れこちらの様子を窺っている彼女へチッチッと舌打ちをしながら野良猫を誘う様な事をしている

それで恐る恐るこちらに歩みよる彼女も彼女だけど

「なまえ、知らなかったとは言え怒鳴って悪かった。」

「い、いえ…私こそ、ごめんなさい。」

「お前が謝る事なんて一つも無い!!お前は…可哀想な奴だ!!良いか!?いつでも私に相談しろ!!どんな事でも、だ!!」

恐怖に震えた彼女を抱き上げてクシャクシャと頭を撫ぜるかすがを見てそっと胸を撫で下ろした

強制的にメールのアドレス交換までしているのだから二人が仲良くなれるだろう

仲良くなれる、と言うよりはかすがが一方的になまえちゃんの守護者になったような気もする

この状況で、何一つ理解していない彼女がきょとんとした表情を向けたが俺はニッコリと頬笑み返しただけ


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あきゅろす。
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