Carrot & Stick
久しぶりに母さんの手料理を食べる、それは当然美味しい
味は確かに分かるのに、美味しいと素直に喜べない
だって隣には悪魔が居て私以外誰もそれがとんでもなく危険な人物だと気付いていないのだ
恐ろしい事に両親は何の疑いを持つ事なく彼を信用して、婚約まで認めてくれた
母さんにいたっては相当この悪魔の事をお気に召されたようで、私が発言しようとする度目の前から睨んで来る
それに風魔君だって私の足をたまに踏む、私はきっと今夜枕を涙で濡らすに違いない
私にあるのは黙秘権のみ、大人しくしてこの場を耐える他無い
流石に両親だって彼を今夜ここに泊めようとまではしない筈、恐らく9時前くらいには帰す…帰して下さい
時計を確認すればまだ7時を回った所で、まだ二時間もあるのかと頭が痛んだ
夕飯が出来るまでは風魔君と父さんが二人で仲良く談笑、その間私はずっと自室で一人泣いていたのだ
どうして皆この泣き腫らした目を見て無反応なんだろう

「そうだ、明日はお祭りがあるでしょう?二人で行って来なさいよ。」

「何を勝手な「行きます。」…。」

とんでもない提案をされて、却下しようにも悪魔が私の言葉を遮った
行きますっって、行きたくないよ、どうして二人でお祭りなん行かなきゃなんないんだ
毎年行われる地元のお祭なんて多寡が知れているし、毎年お客は減る一方
屋台は沢山と並ぶけれどどれも似たような物ばかり、本気で楽しめるわけがない
それも同行者が風魔君となれば脳内でシミュレーションするまえもない

「風魔君、予定無いの?折角の連休だよ?」

「…ある。」

「な、ならそっちを優先しなきゃ!!良いんだよ、無理に母さんの言う事聞かなくて!!」

「なまえと、祭りに行く予定がある。」

「………。」

それは予定と言うのだろうか、その予定は出来たてホヤホヤだ
言葉を失っている私の前では両親が嬉しそうに笑っていて、彼は何を気にするでもなくパクリとご飯を食べた
両親を前にしてバカップルを見せつけているのも同じ、やはり黙っておくべきだろうか
でも黙っていれば私の意見など誰が聞くわけでもなく事が進んでしまう
早い話、何をしても無駄…ま、負けないぞ!!

「私、お祭りなんて行きたくない、楽しくないもん。」

「あら良いの?今年は角食パンマンの人形劇があるのに。」

「!!」

なんと!!そんな予定は公式サイトにのっていなかったのに!!
罠?何が何でも私と風魔君の中を深めようとしている?
どうなんだ、確かめるには当日そこへ足を運ぶしか…でも、でも…っ!!

「先着50名様まで角食パンマンと写真撮影が出来るのよー?」

「い、行き…うう…っ!!」

行きたい、絶対に行きたい!!角食パンマンと写真…腕を組みたい!!
けれどその為には風魔君とお祭りに行くしかない、なんて飴と鞭だ
…や、ちょっと待て、私
彼は人ごみが嫌い、そして人が減りつつあるとは言えそれなりの人は沢山と居る
ならばさり気なく、さり気なくはぐれてしまえば良いのでは?おお、ナイスアイデア!!

「行く!!絶対に行く!!風魔君、お祭り楽しみだね!!」

ヘラリと笑って言った言葉に彼は頷いて少しだけ頬を緩めた
馬鹿め、当日私とはぐれるとも知らずに…っ!!
人形劇が行わる場所はなんとなく分かる、毎年お年寄りのカラオケ大会となるステージしかない
今夜は徹夜でどう彼とはぐれるかを考えなくては!!

(やーい!!はぐれるよ!!全力ではぐれてやるんだから!!)
(人ごみが多いだろうな…はぐれないように掴んでおくか。)


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