最恐パートナー
結局風魔君が私が好きなのかどうかを本人の口から聞きだす事は出来なかった
好きな者同士が成り立つ関係だと教えた後に、私が彼を好きになれば解決と言ったのだ
つまり彼は私が好き、そういう意味で受け取っても良いのだろうか
即刻返却してやりたい
状況は悪化するばかりで、今だって私は放課後の日課となった魔の鬼ごっこの途中
まだ無許可で尾行されるよりはマシなのかも知れないけれど、恐怖に耐えながら彼から逃げるのも一苦労
HRが終われば躊躇う事なく私の腕を掴んで教室を出ようとしたのだ、いったい何処へ連れて行く気か
いや、「自宅」と答えは貰ったばかりか…誰が行くものか!!
逃げる為に犠牲となった佐助君の事は忘れよう、幸せを掴むにはそれなりの犠牲だって必要だ

「………。」

私が必死の思いで逃げ辿り着いたのは図書室、それも誰も居ないと好都合
一人カウンターの下に身を潜めて破裂しそうな心臓に掌をあててなんとか静める
昔から小柄な分カクレンボは得意だったから彼だってそう易々と私を探せまい
最後まで誰も私を見つける事なんて出来ず、皆帰っちゃうなんて事も多々
…あれ、トラウマスイッチ入りそう

「だ、駄目。頑張れ私、過去に負けるな。」

なるべく小声で自分を元気付ける、効果があるのかは分からないけれど誰も居ないから問題無い
いつまで此処に身を潜めて居ようか、正直モナリザに睨まれているようで恐怖だってある
でも風魔君に見つかり自宅へ連行されるよりはマシ、そう思う他無い

「!!」

ガラリと扉の開く音がして、心臓が口から飛び出るのではないかと思った
誰かが来たんだ、先生?生徒?それとも…いやいや、そんな馬鹿な

「やぁ、楽しそうだね。」

「…ひっ!!あ、あー、あー!!もう!!先生、何のつもりですか!!」

カウンターの下を覗き込んで爽やかな笑みを浮かべて言葉をかけたのは天敵と見做した松永先生
どうしてすぐに私が此処に居ると分かったのか、気になるけれど今はそれより授業の内容についてだ
立ち上がり先生を睨んでもその憎たらしい笑みは消えず、ただ「愉快、愉快」と言われただけ
本当に何を考えているのだろう、もしかして風魔君も居るのだろうか

「もう!!先生が余計な事言うから、風魔君が余計おかしくなっちゃったじゃないですか!!」

「余計な事とは心外だな、卿が困っているから私は助けようとしただけではないか。」

「そんな事言ったって誤魔化されません!!恋なんて妙な知識与えちゃって!!状況が悪化したんですよ!!」

「私は本当に良かれと思ってした事だったのだが、そうか、そんなにも迷惑だったのか…。」

「え、あ、え…。」

ギャンギャンと叫び過ぎただろうか、先生の言葉に耳を貸さず一方的に批難し過ぎたかも知れない
あれだけ憎たらしいと思える程の笑みを浮かべていたのに、今ではただ俯いているだけだ
先生なりに考えがあっての事で、それが少し的外れな結果になったのか
完全に勢いを失い戸惑っている私の前ではいつもらしくない先生が一人
どうしよう、言い過ぎた

「す、すみません。ちょっと、苛立っていたので…本当にすみません。」

「分かれば良いのだ。」

…あれ、ケロリとしている、あれ?私騙された?
いやいや、そんなに人を疑うべきではない、人類皆兄弟!!
それに先生は私の味方だもん、将官で…多分、良い人だよ

「それで、どうして此処に?」

「卿の事が気にかかってだな、どうしているのかと。」

「なんと!!私を気遣ってくれたのですね!!」

流石は将官!!と叫べば先生は嫌味の含まれない綺麗な笑みを浮かべてくれた
やっぱり信じるべき存在、頼りになる存在だ!!
一度でも裏切られたと勘違いして絶望した自分が恥ずかしい、此の事は御墓まで持って行こう

「風魔から逃げている最中だろう。私が手助けしてやろう。」

にっこりと白い歯を見せて笑った先生に、私は感激のあまり涙を流しながら敬礼をした

(多勢に無勢…でも相手はあの風魔君!!問題無い!!)
(さて、どうしてやろうか。)


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