着信アリ
佐助君の御陰もあって私は今日も無事に帰宅する事が出来た
しかしそれだけの事でビバマイホーム!!なんて万歳三唱をしている場合でもない
自宅の場所は知られているし、彼は針金一本あれば容易に室内へ入り込む事が可能だ
癇癪玉は全部使い切ったし、効果は無いと分かり切っている
捕まればハムスター扱い、あのグルグルと回る輪を延々と走らされるのか
意味の分からない人だとは重々承知していたが、今の私にとって彼は宇宙人としか思えない
そんな私の最終手段、それは…やっぱり逃げる事
逃げると言っても家の中を走るわけでもない、身軽な彼に敵うとも思えない
だから友人でもあるかすがに帰宅してすぐ電話をして、宿泊の許可を頂いた
正直叱られたばかりでまだ恐いけれど、風魔君の方が比にならない程恐い

「…それ、ストーカーじゃないのか?」

彼女の自室で最近の事について真面目に相談をして一時間くらいした頃
ずっと此方の話に耳を傾けていた彼女が口を開いた
私の話をちゃんと聞いていたのだろうか、ストーカーについては多少の知識はある
だから彼女の言葉を「へぇ!!成程!!」なんて素直に受け入れる事は到底無理な話だ

「ちゃんと話聞いていた?」

「いや、だから…ストーカー以外の何が?」

「………うーん…。」

唸りながら頭をフル活動させるけれど答えは出ない
ストーカー以外での答え…何だ?そもそもまだストーカーとは断言出来ない
懐かれたのは自分でも分かる、でも好意があっての行動だとは思うのは難しい
ご飯は美味しい、それくらいしか良い部分が無い
所有者発言、でも扱いはハムスターとチンプンカンプン
声が聞きたいとか、喋ってとか、俺のとか、あれ?ハムスターって喋るの?

「…でもでも、そうだとしたら…。」

「風魔は、お前が好きなんだろうなぁ。」

そんな事を呑気に言われても、私の小さい頭がパーンとはじけそうになる
例えそうだとしたなら…ぇええ?いや、でも…ぇええ?
有り得ない、だってまともな会話すらした事が無いのだから
無い、無い、と必死に自己暗示をさせながら首を横に振ればかすがが小さく息を吐いた

「度は過ぎているかも知れないが…お前だって別に嫌な気はしないだろう。」

「嫌だから此処に居るの!!恐怖でしかないの!!」

こんな事を言われるならば、以前から彼の事をカッコイイなんて口にするべきではなかった
度が過ぎているなんてものじゃあない、過ぎ過ぎているのだ
そう言えば昔、ボーダーを超えろ、なんてCMがあったなぁ
線を超えろ?人としての一線を越えて、ストーカーに?
違う、違う、ストーカーじゃあない、断じて…っ!!

「なまえ、携帯。」

「!!」

指差された方向にはサイレントに設定されている私の携帯が一つ
音は出ないけれど、サブディスプレイには着信の表示、それも風魔小太郎と名前が出ている
思わず携帯から逃げるようにベッドの上へ飛び乗ってしまう、その間も着信が止まる事は無い
また無言電話攻撃?それとも家に居ない事がばれた?
出るのも恐い、でも出ないのも恐い

「出てみたらどうだ?電話ならまともな会話が出来るだろう?」

「無理だって!!そんな普通の思考で敵う相手じゃあないんだよ!?」

「同じ人間だ、ほら。」

投げられた携帯を一度キャッチしたけれど、すぐに落とせば布団に埋まる
かすがは知らないからそんな事が言えるんだ
同じ人間なんかじゃあない、あれは人の皮を被った悪魔、宇宙人!!
完全に脅えている私に、彼女はニヤリと口元を緩ませて視線を絡めた

「早く出てやれよ、ダーリンからの電話じゃないか。」

父さん母さん、私は生まれて初めて友人を蹴りたい衝動に駆られました


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