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1-4.


1週間の時間割の中でも特に怠い1日を終えて、校門を出た頃には既に陽は大分傾いていた。強い西日に目を細め、何気なく振り返った。

山の上に鎮座する高校の白塗りの外壁が、暗いオレンジに染まってなんとももの寂しい光景だった。








まだ誰も帰っていない家はもちろん、寒い。銀盤のようなフローリングの床は靴下越しでも十分冷たく、小さな痛みにすり変わる。



最大風量に設定したエアコンが効いてきて、ようやく快適に思えるようになった私は、リビングでテレビでも見ようかといつものところに見当たらないリモコンを探している時に、ふとカーテンの隙間から見えた庭に目が留まった。



細い隙間は10センチあるかないか。切り取られた庭の風景は、黄昏時の薄藍に染まり、濃厚な闇の気配を孕んでいる。ガラスを挟んだ向こう側、違う世界を見ているようだった。



夜の帳に包まれるまでの僅かな時間は知らない町で迷子になるような、そんな焦燥感と不安に似ている。



窓に近付いて狭間から空を見上げると、鼠色の雪雲が覆っている。今にも羽毛のような冬の象徴が零れ落ちてきそうな。そして、それは昨晩の夢の迷霧に酷似していた。



凛とした静けさと胸の奥がざわつく感覚。それが何か口にできるほど私はまだ言葉を知らないが、夢の中で妙にリアリティがあると思ったのはこの心地のせいだったのだろう。




――それにしても。
分からないのは目覚める直前にこちらに駆けてきたあの足音。あれは一体誰だろうか。自分に縁がある人物であると思うけれど。



庭の隅の椿に視線を固定したまま1、2分思いを巡らせていたが、明瞭な答えなど分かるはずもなく。



最終的に、所詮は夢だと決め付けて無理矢理思考を断った。


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