Gift
太陽
瞳を閉じて、最初に思い浮かぶ人。
その人は優しくて、暖かくて、まるで―――
暖かい午後の光。
緩やかに流れる水の音。
柔らかな風が草木を揺らし、自然の香りを運んでくる。
そんな世界の息吹きに、穏やかになる心。
――いつからだろう?
こんな風に、世界を見れる様になったのは。
以前の俺は、とても周りを見ていられる様な余裕等なかった。
『復讐』
ただ、その二文字だけが俺を支配していたから。
敵の息子を――ルークを殺す事だけを考えて。
絶望の色に顔を染めた敵の姿を想像して。
…その瞬間がくる事だけを、今か今かと待ち望んでいた日々。
――そんな俺が、こうして周りを、世界を見られる様になったのは。
…俺の、汚くてドロドロとしたモノを、取り除いてくれたのは――
見上げた空には、キラキラと輝いて自己主張する太陽。
その光が眩しくて、目を細める。
すると、ふいに「ガイラルディア。」とすぐ隣からかけられた、耳に心地よい声。
太陽から目を離し、視線を声の主へと向ける。
そして視界に捉えたのは、さっきまで見ていた太陽に負けんばかりに輝く金色の髪を持つ、一国の王。
その輝く髪が、…穏やかに微笑んでいるその表情が眩しくて、再び目を細める。
対する陛下はそんな俺を見てくすりと一つ笑みを漏らし、日除けになるよう俺の額に手を当てて、「何を考えていたんだ?」と尋ねてくる。
そんな陛下の問いかけに、どう答えようかと一瞬考えを巡らした後、俺は答えた。
「…太陽。」
「…ん?」
「太陽について、考えていました。」
そう言って人差し指を上に――太陽に向ける。
「ほう…。それで?」
「…陛下は、太陽にどの様なイメージを持っていますか?」
興味深そうに、相変わらず笑みを浮かべたまま続きを促す陛下へ、逆に質問を投げ掛ける。
すると陛下は、「そうだなぁ〜…」と首を傾げて考え始めた。
その間俺は、考える陛下の顔をただ見つめる。
『この人の持つ太陽のイメージは、一体どんなモノなんだろう?』
――そう考えながら。
そして数秒後、陛下は再び口を開いた。
「一言で表すと、"元気"だな。」
「…何故、そう思うのですか?」
その理由が知りたくて、すかさず問い返した俺に、陛下は気にする事もなく言葉を続けた。
「いつでも、どんな時でも力強く輝いて、俺達を照らしてくれているから、かな。」
「それに、この光に照らされているだけで、元気を貰っている様な気がするし。」
そう言って、陽の光に照らされながら軽く伸びをする陛下。
「…で?そういうガイラルディアは、どの様なイメージを持っているんだ?」
視線を俺へと戻し、問いかけてくる陛下に、今度はちゃんと答える。
「…全てを、優しく包み込んでくれる様なイメージ、ですね。」
ちらりと空の青と白、そして輝く金色の、鮮やかなコントラストを見やりながら続ける。
「例え何があっても、受け止めてくれる様な…。」
「…そうか。」
優しげな声音で紡がれた陛下の言葉に俺は一度口を閉じ、誘われる様に視線を陛下へと戻せば、その表情には微笑みが浮かんでいた。
そんな陛下が俺にはやっぱり眩しくて。
そう、それはまるで―――
「…それで、」
真っ直ぐに陛下の瞳を見つめ、再び口を開く。
「陛下が、俺にとっては太陽の様な存在だな、って考えていたんです。」
そう言い放てば、俺よりも深い青の瞳が僅かに見開かれる。
「陛下が、俺の傍にいてくれたから――名前を呼んでくれたから、俺はこうして今を過ごす事が出来るんです。」
少し大袈裟な様に聞こえるかもしれない。
だけど、これは確かな事。
もし陛下が俺の傍にいてくれなかったら、俺は汚いまま……周りを気にかける事もないまま、一生を終える事になっていただろうから。
「本当に、言葉ではとても言い表せない程、あなたには感謝しています。」
そう伝えて、頭を下げる。
すると、いきなり陛下が俺の頭をわしゃわしゃと撫でまわし始めた。
突然の事に驚いて、手をバタバタさせる俺に、陛下は笑いながら口を開いた。
「バーカ。感謝なんかする必要ねぇよ。俺がお前といたくて一緒にいたんだから。」
それに…、と続けながら陛下が俺の頭を解放する。
「俺も、お前の存在に助けられてるんだぜ?」
だから、お互い様だろ?と言って、真夏の太陽みたいに笑う陛下。
その言葉に、笑顔に、俺も自然と笑顔が溢れた。
こんな俺でも陛下の役に立てている。
…その事実が嬉しかったから。
「それにしても、驚いたなぁ〜。」
「何がです?」
頭を掻きながらぽつりと呟いた陛下に問いかける。
「太陽の事。……俺も、ガイラルディアは太陽の様な存在だと思っていたんだよ。」
右手の人差し指を太陽に向けながら、陛下は答える。
「笑うお前を見る度に、俺は元気を貰ってきたんだ。」
「そんなお前の笑顔が、まるで春の太陽みたいだと思って、な。」
照れくさそうに、太陽に向けていた右手の人差し指で頬を掻きながら言った陛下。
「春の太陽、ですか。」
「ああ。」
「俺は、陛下の笑顔は真夏の太陽みたいだと思いましたよ。」
「…そうか。」
まだ照れくさそうにしている陛下に、俺は悪戯っぽく言葉を返した。
「…陛下。」
「ん?」
「これからも、一緒にいてくれますか?」
「…バーカ。当たり前だろ!」
そう言って笑った陛下の笑顔は、やっぱり真夏の太陽みたいに眩しくて。
目を細める代わりに陛下の胸元に顔を埋めれば、暖かな両腕がそっと優しく包んでくれた―――
6000hitのキリリクです!!
更夜ハル様のみお持ち帰りOKです!!
リクエストの内容は『ピオガイで甘甘』なのです、が……
あ、甘いと言えるの、か…?(汗;
大変お待たせしてしまったのに、こんなので申し訳ございません!!(>_<)
もちろん返品可ですので!!
それではリクエストありがとうございました!!
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