◎The song which was broken◎ 時は3月、春休み――― 長い休みを利用して、龍神の世界。つまり、あちらの世界に泊まりにいく事になっていた当日 すでに数回、平和になった龍神の世界との行き来をこなしていたが、長期滞在は最初に白龍に連れられて以来初めての望美達。ちょっとした旅行の気分だった。 どこでも繋ぐ事が出来る、龍神の世界と神鳥の世界の道 今回は長期滞在と云うこともあり、神鳥の機関に道を繋ぐ 望美、将臣、譲は丁度京都に向かうべく、電車に乗り込もうとしていた。 しかし楽しい時間を打ち崩したのは、望美にかかってきた優雅からの一本の電話 「いなくなったって、どういう事だよっっ」 将臣の叫びと共に、物語は止まらなくなる。 それは、廻り始めていた一つの歯車でしかなかった。 **** 京都に着いても自転は好転しない。 悪い方へと進む。 口を閉ざす白 部屋から出てこない黒 悲しげな優雅 前日までいたらしい奏に、何があったのか。 事の重大さは、ここでも止まらない。 それでも、動かさなければならない。 それでも、動いてしまう。 もう、戻る事はない。 **** 龍神の世界の京に着く望美達を、朔と黒龍が出迎えた。 「よかった。あなた達は無事なのね」 ホッとした様子の朔に、龍神の世界で異変が起きていたことを知る。 それは、何を意味するのか ヒノエの連絡から、敦盛及び平家の数人が行方不明 京の管理を任されている九郎に届いた、鎌倉にいる頼朝の妻、政子が攫われた一報 そして、白龍の気配が消えた為に望美達とも連絡が取れなかった事態 すべては繋がっているのか。 すべては歯車の中なのか。 「鎌倉へ。兄上の所へ行くっ!」 そして、落ちていく運命は見えたのかもしれない。 **** 敦盛以外の全員、鎌倉に着いた。 頼朝に面会をした早々、別の任を受ける。 「藤原泰衡が鎌倉に入る。護衛をし、私の前に連れてこい」 そして、夜の鎌倉を横断する、一行の前に櫻が舞う 満月が美しい月夜の晩 静かな鎌倉の町 行く手を阻む、斬戟に低い声 「ほぅ、為る程な。避けられるなら、資格はありそうだ」 「知…盛……」 行方不明の中に入っていた平知盛の出現 そして、月をバックに屋根に降り立つ3つの影 「知盛っ、泰衡さんに攻撃していいなんて言ってない!!」 「………足止めはちゃんとしたぜ」 そして屋根にいる3人を確認し、絶句する一行 行方不明となっている敦盛 同じく行方不明のはずの重衡 そして、重衡に抱えられ現れた金髪の少女 顔左部分を赤い紋様で刻まれ、左目は青、右目は望美と同じ緑 金髪の髪は下ろしているが、左顔にかかる部分だけ髪を括ってある。 17歳くらいの少女 全然違うのに見たことがある少女 服装も、声も、顔立ちも同じ少女 彼女だと思う。 でもならばなぜ、向けてくる瞳はあんなにも冷たいのだろう? 「私は、あなた達に殺されるわけにはいかない」 その言葉の『しんぎ』はどこにあるのか――――――――――? 長編 ◎デアイとワカレの舞奏曲◎ に続く――――― 終 H20.12.28 |