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現代
15




夏休みが終わると、俺の不名誉な噂は消えてなくなった。
と言うのも、希美が他の男子生徒と付き合い始めたからだ。
気にならないかと言われると嘘になるが、自分から振った手前、俺がどうこう言う権利はない。希美が幸せならそれで良いと思う。

「じゃあ、来週までに提出するように」

高校一年も折り返し地点に差し掛かると、進路相談の機会が訪れる。
うちの高校は二年になると超難解大・難解大を目指す特進文系・理系クラス、私立・国立大を目指す文系・理系クラスに分けられる。
担任から配られた手紙には、来年度の進路希望調査と題して自分がどの大学に行きたいかを書いて提出するように書かれていた。
これがまた頭を抱える悩みの種である。
高校一年の子どもが自分の将来を考えて進路を決めろと言われてもそう簡単に決定できるものではない。特に俺は将来何かやりたいことがある訳でもないし、どこの大学に入りたいとか明確な目標もない。家で真っ白なままの紙を前に一人頭を唸らせる。

「…………」

夏休みが終わっても俺の部屋に入り浸るのを辞めそうにない自称宇宙人は、同じく手紙を貰った筈なのに何か書く素振りも見せず、ずっと本を読んでいる。
もしかしたら既にもう進路を決めていて書き終わっているのだろうか。

「なあ、舘向はもう大学決めたのか」

俺の問いに、本から顔をあげた自称宇宙人は俺の前にある手紙に目を配らせると、合点したとばかりに声をあげた。

「それか。それなら、僕は大学に行かないから問題ない」

「はあ!?」

自称宇宙人の答えに俺は、思わず大きな声をあげた。
県内第二位の進学校においても変わらず学年一位の成績を修めているというのに、何を言っているのだろうか。大学を行かないなど、教師陣が許す筈がないに決まっている。
それに自称宇宙人の頭脳があれば、何にだってなれるだろうし、大学行かないなど勿体なさ過ぎる。

「なんで、行かないんだ?」

「戸野部に言われて地球人の学んでいることを学んできたけど、もうこれ以上続けるのは無駄だと思う」

教師が聞いたら泣くぞ。と言うより、俺も泣きたい。
確かに自称宇宙人にとっては、高校の授業なんて簡単で退屈なものかもしれないが……。だからと言って大学に行かないと言うのも極端な。

「高校と大学じゃレベルは違うんじゃないか?」

それこそ超難解大なんて言われる大学にでも行けば、今の授業よりも格段にレベルの高い内容を学ぶこともできる筈だ。

「変わらないと思うけど」

きっぱりと言い切る自称宇宙人に、俺は頭を抱えたくなった。
来週、自称宇宙人の提出した紙を見て担任が大慌てで自称宇宙人を呼び出すのが目に浮かぶ。更に言えば、面談しても話にならない自称宇宙人に痺れを切らし、俺を呼び出す未来まで簡単に想像がつく。
絶対俺に対し、自称宇宙人の説得を依頼してくるのが目に浮かぶ。

取り敢えず、回避できないならば先んじて自称宇宙人の説得を行うか。

「大学なら、宇宙について研究しているところもあるんじゃないか」

「………!」

自称宇宙人の説得ならば、やはりこれしかないだろう。





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あきゅろす。
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