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現代
21





まるで何かに憑かれたかのように自称宇宙人を撮り続けた写真は、現像するととてもじゃないが人に見せられたものではなくなった。

「これ、確実に18禁だよな……」

何枚もの写真に囲まれた俺は、一枚一枚写真を手にとっては溜息を吐いた。
完成した写真は一種のヌード写真のようなそんな出来栄えになっていた。魅惑の笑み。艶かし過ぎる。流石にこれではエントリーできないよな……そう思って写真を見ていると、横から自称宇宙人が手を伸ばしてきた。

「これ、あの時の写真?」

「あ、」

ひょいっと掬い取るように俺の手から写真を奪い取っていった自称宇宙人。まじまじと見つめるその先には、あの見る者を虜にするような笑みを浮かべた瞬間を収めた写真があった。

「良く撮れていると思うけど」

それを隅々から見ると、自称宇宙人は俺に写真を突き返してきた。
俺はというと、好きな人の写真をズリネタにしていたのをその本人にバレテしまったかのような顔から火が出る恥ずかしい思いをすることになったのだが、自称宇宙人は全く気にした様子がなかった。自分のヌード写真(仮)が他の人の目に入っても平気なのだろうか。

「ゲイジュツって、そういうものじゃないの?」

まさか自称宇宙人の口から芸術が語られるとは思ってもみなかった。
まあ本人の了承も得た訳だし、俺はその写真をエントリーすることに決めた。
俺もそれが一番良く撮れた写真だと思ったからだ。

そうして月日は巡り八月。
コンクールの結果発表の日がやって来た。
驚くことに、なんと俺のあの写真は入賞を果たしていた。

「折角だから見に行こう」

美琴の写真も見事入賞を果たし、俺たちは二人揃って入賞することができた。
コンクールの入賞者の作品は一週間、近くの近代美術館で飾られることになっている。俺たちはデートも兼ねて、そこに自分たちの作品を見に行くことになった。
本音を言うと、俺は美琴に俺の作品を見せたくなかったが。

大きなコンクールだけあって、近代美術館の特設会場は大いに人で賑わっていた。大人から子どもまで幅広い年齢層の閲覧者が場内を犇めきあっていた。

美琴の作品は直ぐに見付かった。入り口から近い展示場にあった。

「凄い………」

それは、虹の写真だった。夕暮れに染まる空に架かった虹の橋。
現実の中の、非現実的なワンシーンだ。
単純な言葉しか口につかなかった。それでも、美琴は俺の反応に嬉しそうだった。

「なあ、もう良くないか。俺の作品なんて別に見なくても……」

美琴の作品の前を離れた俺たちは、美琴の希望で俺の作品を探し始めた。作品が作品なだけに、見られるのがとても気恥ずかしい。知らない誰かに見られる分なら良いが、知り合いに見られ、剰えそれを俺が撮ったというのも知られるのが堪らなく恥ずかしい。
そんな俺の制止をスルーし、美琴は俺の作品を探し始めた。

俺の作品はなかなか見付からなかった。俺の入賞は勘違いだったのかもしれない。
内心、ほくそ笑んでいたが、間もなくして、俺の作品はお目見えすることになった。

そこは特設会場の中でも、一つ孤立した空間だった。
壁紙を全て黒にしたそんな空間に、一枚だけ飾られた写真。
―――それが俺の作品だった。





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