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現代
3





うちで夕食を食べて、その一時間後くらい自称宇宙人は帰っていった。
結局今日一日考えても、良い方法が思い付かなかったなと溜息をつくと、手元にあった携帯からメールの受信を知らせる音が鳴った。
誰だ、と携帯を開くと希美からだった。

『馨君にとって、私って何なのでしょうか』

たったそれだけの短いメールだったが、威力は絶大だった。
―――自称宇宙人のことの他に、もう一つ、俺は解決しなければならない案件を抱え込んだのだから。

なんて自分は愚かだったのだろうか。
自分の彼女に―――希美にこんな不安な想いをさせてしまっていたなんて。
順調に思っていたのは俺だけだったと突き付けられた気がした。

直ぐにメールを返したが、なかなか返信が返ってこなかった。
俺は堪らず、希美に電話を掛けた。
……そう言えば、希美に電話を掛けるのもこれが5回目だった。しかも前4回なんて、5分足らずの短い内容で。携帯代も生活費から出さないといけない俺にとって、長時間の通話は生死に関わる。それを知って、希美も多くは望まなかったし、なるべく自分からかけてくれていた。

「希美」

電話にも出てくれないんじゃないかと思って、無機質になる呼び出し音に耳を傾けていた時。通話を示す、プツッという音がした。その後に、あの不通を示す機械アナウンスがないことからも、電話が繋がったことを示していた。
しかし、こちら側の呼び掛けにも反応がなかった。
画面に希美という名前が表示されていることだけが俺と希美が繋がっていることの証拠だった。

「悪い、希美。そんなに希美を不安にさせているとは思わなかった」

「………彼女って何なんでしょうか…」

漸く聞こえてきたのは、頼りなく消え入りそうな希美の声だった。

『希美は俺の彼女だよ』

返信したメールには目を通しているようだった。その上で、希美はその問いを俺に投げ掛けてきているようだった。
彼女とは何か―――。
改めて聞かれると、そう簡単に答えが思い付かなかった。
そもそも今まで全く付き合った経験のない俺が、彼女のあれこれを語れるはずがないのだ。
だから、俺が希美に返して言葉はひどく単純なものだった。

「大事な人、だよ」

絶対親には聞かせられない台詞だ。
こんな時ほど、一人暮らしで良かったと思う瞬間は無いだろう。こんなことを言っているのを親に聞かれた日には、軽く地球の裏側まで穴を掘って埋まってしまえるだろう。

「………大事な、人…………じゃあ…舘向君は…?」

そこで自称宇宙人の名前が出るとは。いや、希美が自称宇宙人と自分とを比較していたことは薄々感じていた。ただ、希美は彼女だし、自称宇宙人は………。あれ、自称宇宙人は俺にとって何なんだろうか。

あの日――――高校受験後の登校日、自称宇宙人が涙を見せた日。俺は自称宇宙人とともにいることを決めた。彼が望んだからだ。自称宇宙人が俺と一緒にいたいと言ったから、俺は叶えてやろうと思ったのだ。
でも、何で。俺は何であの時、そんな風に思ったのだろう。
俺にとって自称宇宙人は何なんだろう。答えが、見付からない。
しかしだからと言って、今、この時、黙り込むわけにはいかなかった。

「あいつとは……腐れ縁かな。昔から一緒だったし、幼馴染、みたいな」

別に家が近かった訳ではない。でも俺と自称宇宙人は小学校高学年からずっと一緒にいた。
俺たちの関係は、幼馴染と言っても過言ではないと俺は思っている。しかし、たかが幼馴染に、望みを叶えてやりたいと思うだろうか………。





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