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現代
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自称宇宙人のことを知らない人のために、少し彼について補足をするとしたら、そう、彼は所謂ーーー美少年だった。

「館向くんって、影があって何か良いよね」

「儚い感じがするよね!」

「テレビの芸能人みたい」

中学も後半になると、男子より大人びた女子生徒はやれ何組の誰それが格好いいだと騒ぎ始める。そんな話題の的として自称宇宙人は度々あげられた。

しかしながら自称宇宙人が彼女たちにモテたかと言うと、それは話が違う。彼女たちにとって自称宇宙人は完璧に目の保養でしかなかった。

その理由としては第一に、愛想が悪かったこと。愛想がないという可愛いらしい表現では追い付かないほど、自称宇宙人は愛想が悪かった。

第二に、学内での評判が頗る悪かったこと。このくらいの年代の女子は、世間対を気にする。周囲の評価が気になる年頃なのだ。従って、教師からも生徒からも評判が悪い自称宇宙人を、自分の恋人として選ぶことはなかった。

しかし容姿だけ見れば群を抜いて美少年の自称宇宙人を、ただ見ているだけで満足しているーーーという訳でもなかった。彼女らは好きなアイドルの情報を集めるよろしく、裏で自称宇宙人の話を聴きたがった。

そんな彼女たちの好奇心の被害に晒されたのが、学内で、いやこの地上で唯一隣にいることを許された(誇張しすぎか)俺だった。

「戸野部くん、館向くんの友だちだよね?館向くんっていつもどんなことしてるの?」

この頃になると俺は周りに全く敬遠されなくなっていた。寧ろ以前の関係に戻ったと言っても間違いではない。教師の覚えも良く、愛想のある俺を漸く彼らは自分の懐に受け入れたのだ。

今まで散々敬遠していたくせに、等といったことは思わなかった。俺は典型的な去るものは追わず、来るものは拒まず体質だった。(自称宇宙人を除いてだが)

「気になるんなら、本人に聞いてみれば?」

教師陣の計らいで中学二年、三年と自称宇宙人と同じクラスになった俺は、他に追随を許さぬほど、自称宇宙人との間に確固たる関係を築いた。

伴にいる時間が長くなるほど、自称宇宙人との仲は深まった。ーーーそう思っているのは俺だけかもしれないが。ただ、この頃にはもう自称宇宙人の隣にいるのが、彼にとっても自然な状態にまで登り詰めていた。俺が自称宇宙人に構っても、突き放すような素振りは一切なく、寧ろ今のように俺が誰かと楽しく話しているとどこか寂しそうな(俺の勘違いかもしれないが)姿を見せてくれた。

しかし自分のことを話しているのが聞こえるだろうに、皆の輪に入ろうとしない。あくまで交流は俺とだけと決めているのか、自称宇宙人はひたすら沈黙を保っていた。そんな自称宇宙人の姿に、心ときめかせる彼女たちの気がしれない。

少しでも自称宇宙人が他の人と交流できるよう働き掛けてきた俺の努力は全くの徒労に終わっていた。

「だって、ねえ…………」

俺の言葉に互いに顔を見合わせ、嘆息混じりに言葉を重ねる彼女たち。その顔にはありありと自称宇宙人に関わることで、自分まで奇異な目で見られることへの嫌悪にも似た羞恥があった。

そんな中途半端でどっち付かずの態度を取る彼女たちに半ば辟易としながらも、俺にはそうだとしても自称宇宙人と誰かを交流させたい重大な理由があった。

小学六年生からこの町に越してきて、かれこれ3年程の月日が経ち、漸く両親の転勤から解放されたのかと、これからずっとここで暮らしていくんだなと思い始めた頃。

そんな夢を見ていた俺の希望を一刀両断する一言がある日の夕食、母から告げられた。

「またお父さんの仕事の関係で転勤することになっちゃったの」

母は、しれっと何事もないように転勤、つまり引っ越しを口にした。いつも大体こんな感じに突然告げられ、慣れたつもりだったが何分久しぶりだったため、不意を突かれた感じになり、開いた口が塞がらなかった。





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あきゅろす。
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