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お稲荷さまとお嫁さま
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結衣ちゃんと付き合い始めて早二年。俺たちは中等部で最高学年になった。三年になって、漸く、初めて俺らは一緒のクラスになることができた。まあ、その背後に裏の力が働いたりしたけど結衣ちゃんには内緒だ。

「ん?結衣ちゃん何書いてるの」

新学年になって一月が経った、五月のある日の昼休み。昼食を済ませて教室で一休みしようとしたら結衣ちゃんが徐に鞄から一冊のノートを取り出した。そして表紙を開くと何かを書き出した。

「これですか?夢日記を書いているんですよ」

「夢日記?」

夢日記と言うのはあれか。その日見た夢を記憶するという、何とも不可解……じゃなくて変わった行為のことか。どうして結衣ちゃんがそんなことをしているのか不思議で仕方がなかった。昨日はそんな素振りは一切見せていなかったはずだ。昨日あれから、結衣ちゃんの心を揺さぶる何かがあったのだろうか。

「そうです。今朝図書室でこの本を見つけて……」

そう言って結衣ちゃんが取り出したのは“夢占い”という一冊の本だった。

「自分が見た夢から自分の深層心理が見えてくるんですよ」

少し興奮気味に話す結衣ちゃん。
まさか結衣ちゃんが占いなんていう非科学的なものを信じるとは思いもよらなかった。結衣ちゃんのことだから、“そんなの、何の根拠もない出鱈目に決まってます”とか言うと思ってた。

「ちょうど今日見た夢を書いて、調べようと思っていた所です」

結衣ちゃんはパラパラと本のページを捲っている。そして少ししてありました!と嬉しそうに俺にも見せてくる。本心、全く占いに興味のない俺は結衣ちゃんが楽しそうに語るのにただ相槌を返した。しかし聞いているとその結果の的確さに愕然とさせられた。

「そうです、お稲荷さまも今日の夢で調べてみては如何ですか?」

結衣ちゃんの言葉にあまり乗り気にはならなかったが、やってみることにした。





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