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魔法がとけたシンデレラ〜春〜
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何だろう、この時のホソカワさんは可愛い。昨日の試合中のホソカワさんはカッコいいって感じだったのに。

「キョウは、こんな所で何をしてるの……?」

「え、ああ。グラウンドに行く途中で…」

そうだった。斎藤を見に行こうとグラウンドに行く途中だったんだ。

「…そう……」

ホソカワさんこそ、何でこんな所で寝ていたんですかと聞こうとしたら、突然ホソカワさんがベンチから立ち上がった。一体どうしたんだろうと、ベンチに腰掛けながら下から見詰めると、ホソカワさんは振り返って口を開いた。

「…行かないの……?」

「は……?」

俺をじっと見詰めてくるホソカワさん。うん、確実に俺に言ってるんだよな。
行かないの?ってどこに?あれ、もしかしたら一緒にグラウンドに行こうとしてくれてるのかな?

「…ほら……」

いつまで経っても動かない俺に焦れたのか、ホソカワさんが手を差し出してくる。
思ったより大きな掌に、胸が熱くなる。

……って熱くなるって何だよ!

自分の考えを振り払うように、勢いよくホソカワさんの手を掴み、反動でその場に立ち上がる。俺の体重以上の力が一気に掛けられたのだから、よろけるかなと意地の悪い考えが頭を過ったが、予想外にちっともビクともしなかった。……何だか腑に落ちない。
見た目はスラッとして細身のホソカワさんでも、ちゃんと筋肉は付いているってことか。

そのまま二人、肩を並べて歩き出す。
さっき繋いだ手の大きさが意識から離れない。隣を歩くホソカワさんの手に、意識が向かう。俺の背中を撫でてくれた手も、大きかった。王子様の手も、こんな感じなのかな……。

「……繋ぐ…?」

俺がずっと手に視線を向けているのに気付いたのだろう。俺の目の前まで手を揚げてくるホソカワさんに、思わず顔が赤面する。

「……繋ぎません!」

そんなに物欲しそうな顔してたかな、俺。そうだとしたら、凄く恥ずかしい。

「……そう……」

そんな残念そうな顔をされても……。何だかこっちが悪いことをしている気分になる。
手ぐらい繋いでやれば良いのか?まあ減らないしな……。なんて真剣に考えていたら、いつの間にか隣にホソカワさんの姿はなく、遥か前方を歩いていた。
一人で悩んでいた俺が馬鹿みたいじゃないか!!!

慌ててホソカワさんの下へ走っていき、何事もなかった顔で歩いているホソカワさんの隣に何事もなかった顔で付いていく。この人に関しては、悩んだ方が負けって気がする。

そうこうしている内に目的地であるグラウンドに到着していた。

「で……どうするの……?」

グラウンドでは様々な部活が練習をしていた。
一番手前では野球部が、その奥ではサッカー部。斎藤のいる筈の陸上部は……と探してみると何処にも姿がなかった。

あれ、今日練習あるんだよな……?




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あきゅろす。
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