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魔法がとけたシンデレラ〜春〜
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「そう言えば、斎藤が前言ってたホソカワさんに会った」

「……ああ!細川さん?あの人凄かっただろ」

うん、確かに。あの二面性とか。

「中等部の頃からずっとバスケ部のエースでさ。確か高校一年生の頃も先輩を押し退け、即レギュラー入りしてたんだってさ」

ああ、そっちの意味か。確かにバスケの技術はあの中でピカイチだったと思う。水を得た魚、大空を羽ばたく鳥たちのように生き生きとしていた。所がどっこい、一度コートから抜ければ陸に上がった河童さながら、ただのぼおっとした人になってしまう。

「あまりに凄まじい技術に、あの顔でバスケ部の王子様なんて呼ばれてるみたいだな」

「………どっちかと言うと眠り姫じゃないか…?」

うわ、斎藤も知ってるとか、どんだけ有名な人だったんだ、あの人。
寝ている時とは想像つかない。

「眠り姫?何で?」

どうやら斎藤はホソカワさんの素の姿を知らないみたいだ。こっちの姿は有名ではないのか。
……そう言えば榊さんも前に、“王子様”だとか言ってたけどあの時は確か素のホソカワさんの方に会った話をしたんだよな。ってことは榊さんは、知ってたのか。王子様の二面性を。

「おー二人ともこんな所にいたのか」

「「高野!」」

そこに部活が終わった高野が現れた。あの後片付け後にランニングや筋トレをしていたようで、もうクタクタだーとか言いながら、豪快に飯を掻き込んでいる。

「ちょうど今、細川さんの話してたんだぜ」

「あ?ああ、細川さん。あの人、ほんとすげーよ。卒業後はプロ入りとかもう話が出てるみたいだぜ」

マジか!巧い巧いとは思ってたけど、そこまでとは思わなかった。だって、あのホソカワさんだぞ……。何だか自分の中でホソカワさんの評価が人一倍低くなっている気がするが気にしないことにする。

「ほんと尊敬する!俺も細川さんの1%でも巧くなりてえよ」

うーん……何だかなー…。ホソカワさんだぞ?あの、ホソカワさん何だぞ?

その後一緒に食堂を出て、部屋の前で高野とは別れた。斎藤は風呂に入ったら直ぐに寝てしまった。部活をやった日なんて、俺もそんなもんだし不思議じゃない。

斎藤が寝て静かになった部屋で、俺は一人思案に暮れていた。
卒アルから探すという案は没になってしまった。結局顔をちゃんと覚えていないのだから、意味がない。それに正直もう図書室には近寄りたくない。あそこは鬼門だ!
しかし、そうだとしてこれからどうしよう……。もう手掛かりがない。

このまま、見付けられなかったどうしよう……。

ぽつりと一粒の滴が床を濡らした。

「あーもう!クヨクヨしたとこで意味ねえんだよ!」

こんな鬱々とした所で仕方ないんだ。探すしかないんだ。諦めたら、そこで終わりだ。
また新たな手掛かりを探すため、志苑に協力を得よう。
そうだ!それしか方法はない。そうと決まったら、今日はもう寝よう。
起きてても、嫌な考えしか思い浮かばないしな。





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あきゅろす。
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