魔法がとけたシンデレラ〜春〜 5 って、あれ……。よく見れば、俺、この人知ってる気がする……。 一体いつ、どこで、誰だっけと最近の記憶を呼び起こす。ああーっと、そうだ。この前昼休み、中庭で会った人だ。確か名前は………。 「ホソカワ レイさん?」 「…なに……?」 どうやらビンゴだったようだ。ああ、何で直ぐ思い出せなかったんだろう。この人のせいで、あの時は授業に遅れ、部活に遅れ、鞍馬さんにコッテリ絞られることになったのに。 ………それにしても、この人なんでまたこんなところで寝てたんだ…? 「こんな所で何してるんですか?」 「……休憩…」 「休憩……?」 相変わらず“…”が多い人だ。それにしても“休憩”ってどういうことだ? 「…そう言えば……キョウも見に来てたね……」 ん……?どういう意味だ?今日も見に来てたね……? 一体この人は何を言っているんだろうと思っていると、ホソカワさんは芝生に預けていた背を起こし、そのままその場に立ち上がった。 「…………あっ!」 全身を隈なく見て、漸く俺は気付いた。 その服、その姿……。 「バスケ部の“王子様”!!」 何で直ぐに気付かなかったんだろう。今さっき見ていた所なのに。 目の前にいる人は、紛れなくあの7番の選手だった。 というか着ている服もよく見ればユニフォームだし、ちゃんと7番って数字が付いている。 「………王子様…?」 「え、いや、あの………」 あれ、この人自分がファンクラブから何て呼ばれているか知らないんだ。 ……それにしても。何なんだろう、この変貌振りは。 体育館の中で見たときと様子が違い過ぎやしませんか……!?まあ俺が前中庭で会ったときもこんな感じだったから、きっとこっちが素なんだろうけど。 「………行かなきゃ…」 「え……?」 胡散臭そうなものを見る目で見ていた俺を余所に、ホソカワさんはクルッと踝を返し、体育館の方へ歩いていってしまった。 そうか、一応あの人もバスケ部員なんだ。この後ミーティングがあるだろうし、部活に戻ったのか。 何だか、本当、変な人だ……。 その後は何事もなく、俺は寮に帰ってきた。暫くして斎藤も部活の練習が終わり帰宅してきて、2人で夕食を食べに食堂に向かった。 「へえーバスケ部の練習試合を見に行ってたのか」 「そう、凄く楽しかった」 「くそーいいなー。俺なんて日差しの厳しい暑い中、只管グラウンド走らされてたんだぞ」 それは、まあ陸上部だから仕方ないだろ。なんてことは言わず、ただスラッと流す。 [前へ][次へ] [戻る] |