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魔法がとけたシンデレラ〜春〜
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「で、どうだった?」

目を凛々に輝かせて尋ねてくる高野。高野自身、この試合を大いに楽しんで燃え上がったのが窺える。

「凄く楽しかった」

見ていて燃えるものがあった。圧勝の試合でもやっぱり魅せる人がいるとそれだけで試合が盛り上がる。そこまでバスケに詳しくない俺でもそうなのだから、バスケ部員である高野にとっては最高に盛り上がる試合だっただろう。

「そっか、それじゃあ誘って良かった」

「ああ、良い気分転換になったよ、ありがとな」

部屋の中で鬱々と一人閉じこもっているよりは、断然精神衛生上良い。
わざわざ誘ってくれた高野には感謝しなければ。

「次はレギュラーになって試合に出てみせるから、また見に来てくれよな」

この後、片付けが残ってるからと言って、高野は部活へ戻って行った。
高野への顔見せも済んだことだし、俺も帰るかと体育館を後にすることにした。

「………あれ?」

体育館を出て、暫く歩いていると目の前の叢から人の足が飛び出しているのが見えた。まさか、人が倒れている!?と血相を抱えてその人物?に近寄る。

「あの、大丈夫ですか?」

叢を掻き分け、一面芝生の拓けた場所に出た俺は、そこに横たわる人に声を掛けた。

「……………」

しかし、全く反応がない。一層不安が過り、更に大きな声で呼んでみる。

「あのーすみません!生きてますか!?」

まさか学内で死人が!?なんて腰が抜けそうになる。
何とか落ち着いて目の前の何の反応も返さない人物の様子を観察する。

出血はしていない。外傷はなさそうだ。でも頭を殴打とかして転倒したのなら、安心できない。って、あれ、この人の着ている服、ついさっき見ていたような……。
いや、今はそれどころじゃない。呼吸を確認しなきゃ!

「……………してる…」

鼻先に頬を寄せ、視線を胸にやる。すると頬には呼吸が当たり、胸がその呼吸に従って上下しているのが目に留まった。ちゃんと生きている。
って待てよ、つまりこの人、倒れているんじゃなくて………。

「………なに、してるの…?」

耳元で聞こえてきた声に、驚いて飛び上がる。
やっぱり、この人寝てただけだ!なんて人騒がせな……!ってじゃあ今まで俺がしていたことって何だったんだ!この人にしてみれば、寝ている自分に近寄って何か変なことをしていた変態でしかない。は、恥ずかしすぎる……。

「………ん?」

掛けられるだろう罵倒に身を竦めていたが、いつまで経っても何の反応もない。おかしいなと思って、傍迷惑な人(仮)を見てみるとじっと何も言わずにこちらを見ていた。

「…ササジマ キョウ……?」

「え、何で名前……」

目の前の人物から発せられた自分の名前に驚いて、開いた口が塞がらない。
どうしてこの人、俺の名前知っているんだ……。




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あきゅろす。
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