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魔法がとけたシンデレラ〜春〜
3




「バスケ部だったのか……」

目の前で繰り広げられている試合に、俺は漸く高野の部活を知った。
選手たちが互いにボールを奪い合う姿は、胸が熱くなる。本当に一瞬のうちにゴールが決まって試合が動き、目が離せなくなる。以前部活見学で覗いた時も思ったけど、本当にうちのバスケ部はレベルが高いと思う。見る者を圧巻し、一挙一動に夢中にさせる。

「…………」

ずっと試合を見ているうちに、とても目につく選手がいることに気付いた。背番号7番の選手。跳び抜けて巧い。その選手がボールを持つだけで、場の空気が一気に優勢モードに変わる。

「「「怜様―――っ!」」」

そして更に、その選手が前線に出るだけで大きな声援が揚がる。
声援の揚がった方を見てみると、大きな弾幕が掲げられ、怜様ラブと書かれた団扇を持って応援している生徒の集団の姿が見えた。そう言えば以前もいたような気がする。ファンクラブという奴か。
確か斎藤が言うには、バスケ部のエースのファンクラブだとか。ということは、あの7番の選手がバスケ部のエースで、このファンクラブの主ということか。

なるほど、然もありなん。バスケが上手くて、容姿も整っている。ファンクラブを背負っていても何の不思議もない。
でも、あれ……。何かあの人、最近どこかで見たことがある気がするな……。体育館内でとかじゃなくて、もっと別のところで……。

うーんと一人頭を捻っていると、試合は前半が終わりハーフタイムになっていた。
選手たちが自軍のベンチに戻っていく。ベンチに待機していた部員たちがタオルや飲み物を持ち、選手たちに群がる。その中に高野の姿を見付けた。
そうか、一年は普通試合に出ないで応援か……。よっぽど巧い奴じゃなければ、一年のうちから試合に出させてはもらえないよな。

「あー流石、怜様!今日も一番輝いている!」

「そんなの、当たり前!なんせ、僕らの“王子様”なんだから!」

ふと、ファンクラブから聞こえてきた言葉に、ビクンと胸が大きく脈打つ。
“王子様”、だって……?7番の選手をよく見ようと身を乗り出そうとするが、ベンチは遠く、また部員に囲まれていて見ることができなかった。
先月部活見学で見た姿も、ほんと一瞬でよく見ることができなかった。
“王子様”って、あの王子様なのかな……?はっ!でも、結局俺、王子様の顔をちゃんと覚えてないんだから、見たところで判断できないじゃん……!!!

「ぬ、抜かった……」

一人落ち込んでいるうちにハーフタイムが終わり、試合は後半戦へ突入した。
試合は常時うちが優勢で、このまま何事もなければ勝敗は覆ることはなさそうだ。
試合中、7番の選手を始終観察してみたが、やはり分からない。カッコいいのは確かだし、髪も茶色だけど、なんか違う気が……うーん………。

一人唸りながら、コートを見ている姿はなんと異様だったことか。この時の俺には周りなんて全く関係なく、気にしてなんていられなかったのだけど。

試合は予想通りうちの勝利で終わった。
結局7番の選手が試合中最も獲得得点が高かった気がする。うん、王子様の名に恥じない成績だ。こういうとこもファンクラブを持つ所以の1つなのかもしれない。

「笹島!来てくれたんだな」

「約束したからな」

試合も終わったし、どうしようかなっと考えているとベンチから高野がやって来た。
帰るにしても高野に一言言ってから帰ろうと思っていただけに丁度良い。
何だかその言い振りだと、まるで俺が来ないのではないかと思っていた口振りじゃないか?約束しておいて、ドタキャンするような奴と思ってた訳か?まあ、突っ込まないけどさ。




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