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【解けない繋がり】
御題配布元:No news is good news.
 目を覚ましたローザを、黒い世界が出迎えた。
「ここは、地獄かしら……。きっとそうね……。でも、もっと酷いところだと思っていたわ」
 ただ、暗い。どこまでも暗い闇の中、ぽつんと一人きり。
「ローザ様」
 聞き慣れた声に振り向くと、漆黒の空間にぼんやりとヴェルノの姿が浮かんで見えた。
 これは地獄の断罪者が見せた幻だろうか。自分が部下に引き入れなければ、あんな男に入れあげたりしなければ、ヴェルノは死なずに済んだはずだ。数多の罪を重ねてきた自分に、地獄はどんな罰を与えようというのか。
「ローザ様」
 身体をバラバラにされて死んだはずのヴェルノ。今はいつもどおりの小憎らしくも愛らしい少女の姿でローザに笑いかけてくる。
 近付いたら消えてしまうのではないか、そう思いながらもローザはヴェルノに駆け寄った。
 いる。
 どこにもいかない。消えたりしない。確かに、ここにいる。
「ヴェルノ……!」
 小さな身体を力いっぱい抱きしめた。幻覚ではないと全身で感じたかった。
「えへへ、ぎゅーってしてくれて嬉しいお」
 その無邪気な笑みを見るだけで胸がいっぱいになり、泣き出しそうになる。
「生きてる間にしてあげられなくてごめんなさい」
「でも、今はすごく嬉しいお。ぎゅーってしてくれるのも、同じ場所に来てくれたことも……」
「そうね。私も嬉しいわ。地獄でもあなたがいてくれるなんて」
 地獄はもっと孤独な世界だと思っていた。信じられない再会に心が震える。
「当然だお。私、悪いことたくさんしてたから、天国には行けるわけないお」
 ヴェルノは自嘲気味に笑う。その悪いことの大半はローザがさせたのだ。
「ヴェルノ、私ね、やっとわかったの」
 華奢な肩を掴み、ヴェルノの瞳をまっすぐに見据える。
「あなたが殺されたとき、目の前が真っ暗になった。ずっと愚かな恋の幻想にとらわれて気付かずにいた、本当に大切なのは誰なのか……」
 涙ぐみヴェルノの頬を撫で、今度はふわりと優しく包み込むように抱きしめた。
「好き……、大好きよ、ヴェルノ」
「ヴェルノも、ローザ様が大好きだお」
 小さな両手が背中にまわされるのを感じる。
 どれほどの時間、そのままでいたのだろう。不意にローザは囁いた。
「ねえ、お願いがあるの」
「ローザ様のお願いなら喜んで!」

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