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頂き物
この腕に収まるおくりもの(銀森※子森田)<千崎様より>
「銀さんのばかっ!!」その黒目がちな瞳がいっぱいに涙を溜めて、きれいだと
思う頃には頬にすっと流れた。
どうした、と声に出す間もなく鉄雄は小さな足で駆け出して、とっさに伸ばした
手をすり抜けて走って行った。
正直、叫ばれた一言が胸に刺さって、そのまま己の足も縫いとめたように動けな
かった。






「銀さん、誕生日おめでとう!」「上物のワイン持ってきたぜー」
急ににぎやかになる玄関、その元である客人たちを銀二よりも早く迎える鉄雄が
、「誕生日」という単語にピクリと反応した。
「誰の……ですか?」
「おお、そういや今日だっけか。悪ぃな」
後からやってきて鉄雄の言葉を聞いていなかった銀二の代わりに巽がそっと鉄雄
に教えた。

「銀さんのだよ」

鉄雄の目が見開かれ、動揺する巽の様子に銀二も視線を落とした。
ーーーそして冒頭に戻る。

状況が飲み込めないまま一番外側に居た安田が鉄雄を追いかけたが、泣きながら
も知恵を働かしたらしい。物陰に隠れていたのか、安田はその姿を見つけること
も出来ずに戻って来た。
「すまん、撒かれちまったよ…」

「…いや、おそらくだが原因は俺にある……おい、留守は頼んだぜ」
上着に袖を通し入れ違いに玄関に向かう銀二、表情が仄かに曇っているが既に冷
静さを取り戻している。
「見つけたら、連絡入れるからな」
そして、振り替えることもせず踏み出した。




「ばかって、言っちゃった…」
ずっ。鼻水をすすり目をこする少年もとい鉄雄、マンションからそう遠くない公
園に居た。
「どうしよう…」
何と言って帰ればいいのか、そもそもあんなことを吐き捨てておいて帰れるのか
。銀二は、どう思っているのか。
「銀さんの、たんじょうび、なのに」

少し前、銀二の元に来てから初めての鉄雄の誕生日のこと。自分に柔らかい笑顔
を向ける銀二に「どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」と訊くと、銀二は「
鉄雄が生まれた日だから」と答えた。
すぐには言葉が出なかった。親戚にも毎年祝われてきたが、どの「おめでとう」
の言葉よりも心に響いて、鉄雄が両親を亡くし生きていく上で身についた”しっ
かりした行儀のいい子供”というもう一人の自分が守る弱い部分を揺さぶった。
「うれしいです……」と声を震わせながらも言ったその日、鉄雄にとって誕生日
は特別な意味を持った。


その銀二の誕生日を、自分は知らなかった。訊かなかった自分が悪いのだ。そう
思うものの、やはり知らせて欲しかったという気持ちで胸が塞がる。
やがてその気持ちと自己嫌悪は、涙となって溢れ出て止まらなくなった。
「銀さあん…うああ、ひっく、うっ…」

「…ッ呼んだか…」

ポンと頭に手を置かれ、びっくりして見上げると、息を切らした銀二がいた。
「俺だ。…ああ、見つかった。少ししたら帰る。」
慣れた手つきで取り出した携帯をまた仕舞い、鉄雄の座るベンチに腰を落とす。

「はあ〜…」
「!…ご、ごめ、なさい…」
「ん?」
「ばかって、言って…出てって、かってなことして…う、」
再び涙がこみ上げてどうしようもなくなった時、鉄雄の体が浮いて、気がついた
ら銀二の腕の中にいた。
「違う、ため息をついたのはお前が無事で安心したからだ…」ぎゅっと抱きしめ
られて、さっきまでどろどろとしていた心が安心感で満たされていく。
「銀さん…心配かけて、ごめんなさい」
「ああ」
「おれも、銀さんの生まれた日を、ちゃんとお祝いしたかったから」
「ああ…教えてなくって、悪かったな」
よしよしと頭を撫でられる。
「ごめんなさい…」
「俺の方が悪かった。ごめんな。」

自分は好きなだけ愛情を注いで、まるでこの子の気持ちを考えていなかった。自
分の方が想う気持ちが強いだなんて、そんな勝手な思い込みをして。
本気で応えてくれていたこの子に、なんて失礼なことを。

もう一度抱きしめる腕に力を込めて、「よし、帰るか」と公園を後にした。


マンションも目の前になる頃、手を繋いだままの鉄雄が「でも、何かプレゼント
したかったかです…」と呟いた。
「…そうだな、鉄雄の淹れたコーヒーが飲みてえな」
「……!はいっ!!」
元気よく答えたあと手を離し、階段を一段飛ばしで上ると、踊り場で振り返った
鉄雄がすっかりいつものよな笑顔で、
「大きくなったらおれ、銀さんにもっといいものプレゼントしますっ!毎年お祝
いしますっ!」と高らかに宣言して、また上へと跳ねていった。

あっけにとられた後、嬉しそうに目を細めて一人、「十分いいもん貰ってるよ」
と、もう姿の見えない少年に返した。




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千崎様より誕生日祝いに頂きました。
図々しくも誕生日だと言って本当に良かった!子森田リクエストして本当に良かった!!
この森田は7歳くらいだそうで、もう本当に可愛いっ!!こんな子居たら撫でてあげたくなりますっ!
しかし、良い子で可愛いなぁ///

本当にありがとうございましたvv

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あきゅろす。
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